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「日立製作所の社長をやってほしい」と言われたのは69歳のとき。創業以来の赤字を出した直後の2009年に、社長をやる人間が誰もいなかったためだ。
意識したのは自分が年寄りだということ。短期間のうちになすべきことをやり遂げ、早く辞めなければならないと考えた。
動乱期のビジネス論
だから私は、「仕事の書」として『言志四録(げんししろく)』をよく読んだ。幕末の儒学者・佐藤一斎(いっさい)(1772〜1859年)が後半生の四十余年にわたって書いた語録で、一言で言えば動乱期のビジネス論。孔子をはじめとした儒家の思想を基に、現代のビジネスにも当てはまるような痛烈な言葉がつづられている。
例えば、「雅事は多く是(こ)れ虚なり」。会社はさまざまな周年行事をやったり、お客さんとドンチャン騒ぎで遊んだりするけどみんな虚だ、と。また「凡(およ)そ剛強の者は与(くみ)し易(やす)く、柔軟の者怕(おそ)る可(べ)し」。仕事の中でも、柔軟な相手のほうが本当は怖いでしょう。人を見る眼力が大事だなと思い当てはまる。
最晩年の『耋録(てつろく)』には、年寄りに関することがよく書かれている。例えば、老人への戒めとして、「老人は気急なり」と、自重せずに妄言を信じることの危うさを説く。また「老人は尤(もっと)も遜譲を要す」と譲ることの重要性をいう。
普通の社長のように6〜7年もやっていたら、次の中西宏明君(2010年日立社長に就任、故人)は70歳近くで社長就任になってしまう。それで経営を早く譲った。
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