井原西鶴(1642〜1693年)が著した『日本永代蔵』の「永代蔵」とは永く続く富のことだ。この時代の商人たちにとっては莫大な富を得ることより、「永く続く」ことが価値だった。さらにこの作品には「大福新長者教」という副題もついている。長者になるための教え、という意味だ。
しかし「経済」はそもそも「経世済民」の略である。江戸時代では、世の中を営むことで万民を救済する、という意味だ。金を儲けることではない。
商いが継続するには、それが自分のためだけでなく人のためにもなり、社会の役に立ち、人から信用されることが重要なのである。であるから長者の教えといっても金儲け指南ではなく、商いを営み、さらにそれが継続するには何が大切なのかを書いている。
全体を読み終わったときには、「まともな人間としてビジネスを続けるためにはどう生きるべきか」がわかる。それが、今読むべき古典とする理由である。
経営における「日本」意識
その背後には経営における「日本」意識もある。江戸時代に日本人は、外国から入ってくる高度な商品を生活に合わせて「日本化」しつつ、新しい商品や商法を生み出していたのである。つまり生産者も商人も世界を知っていた。イノベーションが絶えず起こり、自国の製品に誇りを持っていた。それが表題の「日本」という言葉に表れている。
「煎じやう常とはかはる問薬」という話では、金持ちになる処方箋が書かれている。しかもそれぞれの割合まで指南する。最も大きな割合であるのは家業、つまり本来の仕事に励むことで、それは40%を占める。次に倹約で20%、健康が14%、早起きが10%等々だ。倹約をするには何を回避すればよいかも詳しく書かれている。
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