ドイツ外交を変えた「ウクライナ侵略」の衝撃 ロシア宥和姿勢を転換、エネルギーは脱ロシア

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ロシアによるウクライナ侵攻の結果、大きく変化したのがドイツの安全保障政策だ。ドイツは大きく3つの歴史的転換を果たした。

2018年8月に開かれた共同記者会見で、プーチン大統領(左)とメルケル前首相(右)(写真Krisztian Bocsi/Bloomberg)

ロシアのプーチン大統領による2月24日のウクライナ侵略は、ヨーロッパの安全保障をめぐる状況を大きく変えた。中でも、それまでの安全保障政策の抜本的見直しを迫られたのがヨーロッパの基軸国ドイツだ。

2月27日のショルツ首相の下院演説が転換点だった。

演説の中でショルツ首相は、ドイツ軍の装備を最新鋭にするための資金として1000億ユーロ(約14兆円)の「特別財産」を設けること、2022年以降の国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に増やすことを表明した。国防費2%以上は北大西洋条約機構(NATO)加盟国の公約でもある。

破綻した「対ロシア宥和政策」

これに先立ち、ドイツ政府はウクライナに武器を供与することや、ロシアとドイツを結ぶバルト海の海底天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」の停止を表明している。これら一連の政策で、ドイツ外交は「歴史的転換」を画したと評価された。 

歴史的とされる理由の1つは、対ロシア宥和政策の破綻を認めたことだ。

ロシアとの関係強化に最も熱心な政治家として知られるのがシュレーダー元首相(首相在任1998~2005年)だ。プーチン氏とともにノルドストリーム事業を推進したのがシュレーダー氏であり、首相退任後も多くのロシアのエネルギー企業役員を務めるなど、対ロシア宥和政策の象徴といえる存在となっていた。

シュレーダー氏の後任のメルケル前首相(首相在任2005~2021年)はシュレーダー氏とは一線を画し、ロシアの反体制派弾圧を批判するなど、プーチン氏とは距離を取った。ただ、そのメルケル氏もノルドストリーム2の着工を承認し、2014年のロシアによるクリミア併合に対する制裁措置も、ロシアとの経済関係に支障のない範囲にとどめた。

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