映画「あちらにいる鬼」監督が引き出す俳優の魅力 幅広い作風で話題を呼ぶ廣木隆一監督に聞く

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――廣木監督は非常に多作で、今年は5本作品が公開され、3本が東京国際映画祭で上映されました。東日本大震災後の被災者女性を描いた『彼女の人生は間違いじゃない』(‘17)、SMクラブに通う水道局勤務の男性と女王様を描いた『夕方のおともだち』(’22)から今作のような大人の恋愛作品まで幅広い作風ですが、女優さんの魅力を引き出すことに定評があります。今まで見たことのない表情をスクリーンでたくさん見てきました。

いやいや……、毎回「当たって砕けろ」で、実際、砕けてます(笑)。ずるいやり方なのですが、毎回女優さんには「どう思いますか?」と聞くだけです。

それで「監督はどう思いますか?」と聞かれたら、「自分はこう思う」という言い方はします。ただ、男性が、女性が、俳優個人が、僕個人が、何を感じるかというよりは、そのキャラクターがどう感じるかが大切です。

そして、その答えはもちろん、僕ではわかりません。それはそのキャラクターになり切っている俳優にしかわからないというか。だからそのキャラクターになるまでやってもらうしかありません。

それから僕は女優さんには基本的にはノーメイクに近い状態で演技してもらいます。

廣木監督(写真:筆者撮影)

基本的にノーメイクに近い状態で演技

――そうなんですか?

はい。普通の日常のシーンでそんなに厚いメイクをしながらご飯を作ってる人はいないですよね。

――若い頃から「自分で考えてもらう」という演出方法を取っていたのでしょうか。

若い頃は「ああしてください」「こうしてください」そればっかりですよ。でもある時、自分で「それ、自分の頭の中だけで考えたことだよね?」と醒めてしまったというか……。

ガチガチに演技指導すると同じ映画しか撮れません。スクリーンには同じような女性しか出て来なくなってしまう。

それは自分の映画としては損だと。やはり自分の想像を超える世界が見てみたいという気持ちがあって。なので、毎回撮り方を変えています。そして成功したと思っても、その方法を使い続けるのではなく、毎回リセットして、次はまた違うアプローチをします。全部手持ちカメラで撮ったこともあります。最近はアップが多いと言われますが。

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