映画「あちらにいる鬼」監督が引き出す俳優の魅力 幅広い作風で話題を呼ぶ廣木隆一監督に聞く

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脚本は荒井(晴彦)さんというのは最初から頭の中にありました。『ヴァイブレータ』(‘03)『やわらかい生活』(’06)も、主演女優が寺島、脚本は荒井さん、監督は僕です。この作品が3本目の寺島の作品になればいいなと。

――監督にとっての主演の寺島しのぶさんの魅力はどのようなものなのでしょうか。

とにかく上手いです。そして上手いだけじゃなくて、「心」もあります。最初に『ヴァイブレータ』で組んだ時は撮影現場では険悪な雰囲気でしたね……。なぜかというと、彼女は今までやってきた役の流れで演じていました。

その演技を現場で見ていて「それじゃない」と思って。得意な分野ではない、違う彼女が見たかった。それを言葉ではなく「もう1回、もう1回、違う、違うね。もう1回」と何テイクも何テイクも撮り直して仲が悪くなったのですが……。

寺島しのぶさんは稀有な存在の女優

何が違うのかは敢えて言葉にして伝えませんでした。それを伝えるとそのとおりにできてしまうからです。彼女はそれができるぐらいに芝居が上手い。それ自体すごいことですが、それよりも自分が培ってきた演技のクセを落として、彼女自身で主役の人間像を作って欲しかった。

本作の最後、アドリブで何か口ずさんでいますが、脚本がうんぬんではなく「そこにその役者としている」というのが、やっぱり稀有な存在だと思います。

――初めて組んだ『ヴァイブレータ』の頃から寺島さんに女優としての魅力を感じていたのでしょうか。

梨園の家に生まれて、お父さんも役者、お母さんも役者。僕なんかよりもはるかに早く、芝居というか芸事の世界に生きているわけですよね。

そういうところに育った彼女は、やはり違うものを持っているのではないかと思えましたね。

『ヴァイブレータ』の撮影が終わった後は、大学の同級生の仲良しの友達と普通に食事しながら会話をしている場に居合わせたこともありましたが、役者をやっているときとのギャップがすごくあって。「こういう面もあるのか」と。もっと違う面を引き出してみたいと興味を持ちました。

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