発達障害の人に「がんばれ」言ってはいけないワケ 大切なのは「特性への理解」と仕組みづくり

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肝心なのはその後の維持。机の上、引き出しの中、棚の上などブロックに分け、1日1カ所ずつ片付ける習慣を促します。

ただ、同じ乱雑な状況でも、ASDの人は「物が取りやすい」など本人のルールでは理にかなっていることもあります。自分が心地よければ、無理に片付ける必要はありませんが、公共のスペースでは最低限の配慮は必要です。

あの有名人も発達障害だった?

ニトリホールディングス会長の似鳥昭雄さんは、70歳を過ぎてからADHDとの診断を受けたそうです。子どものころから注意散漫で、人の話が聞けず、整理整頓も苦手なうえに、忘れ物の名人。小学校4年生まで、自分の名前を漢字で書けなかったといいます。

『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします 

大人になってからも相当なご苦労をされたようですが、ある取材記事で「発達障害のおかげで、私は成功できた」と仰っていたのが印象的でした。

他にも、経済評論家の勝間和代さん、アメリカの企業、テスラのイーロン・マスクさんなど、近年では発達障害的な傾向を持つことを口にされる方も少なくありません。

発達障害の人というのは決して能力が低いわけでも、人間性に問題があるわけでもありません。むしろ、その特性を上手に引き出せれば、定型発達の人と同等もしくはそれ以上の能力を発揮する、大きな可能性を秘めた人たちなのです。

そして、そのためには、周囲の人の理解と手助けにより、環境を整えてあげることが何よりも重要です。もちろん、定型発達の人でも、発達障害の特性に似た傾向を持つ人は決して少なくありません。むしろ、この本で紹介した32個の事例の中で、「自分はひとつも当てはまらなかった」という人のほうが少ないのではないでしょうか。

発達障害なのか。グレーゾーンなのか。定型発達なのか。

そういった診断的な側面だけにとらわれず、誰もが持つ脳の特性・傾向からくる困りごと解決ツールとしていただけたら、これほどうれしいことはありません。

岩瀬 利郎 精神科医、博士(医学)

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いわせ としお / Toshio Iwase

東京国際大学医療健康学部准教授/日本医療科学大学兼任教授。埼玉石心会病院精神科部長、武蔵の森病院院長、東京国際大学人間社会学部専任教授、同大学教育研究推進機構専任教授を経て現職。精神科専門医、睡眠専門医、臨床心理士・公認心理師。著書に「心理教科書 公認心理師 要点ブック+一問一答 第2版」、「心理教科書 公認心理師 完全合格テキスト 第2版」(ともに共著、翔泳社)など。メディア出演に、テレビ東京「主治医が見つかる診療所〜寝起きの悪い人と寝起きのいい人の体は何が違うの〜」、 NHK BS プレミアム「偉人たちの健康診断〜徳川家康 老眼知らずの秘密〜」など。

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