発達障害の人に「がんばれ」言ってはいけないワケ 大切なのは「特性への理解」と仕組みづくり

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ADHDのWさん(25歳・女性)は、書類に誤字脱字や計算間違いなどが多く、上司によく叱責されるそうです。

このような場合、「いい加減」「やる気がない」と思われてしまいがちですが、ADHDの人は、ほとんどの場合、注意欠如という特性を持っています。

次から次へと意識が別のものに移ったり、目の前のことから意識が離れ、あれこれと思いをめぐらせてしまう“マインド・ワンダリング”という状態になったりすることも多いため、集中してひとつのことを成し遂げるのが苦手なのです。

このような特性からくるミスを叱責されると、焦ってさらにミスを連発したり、意欲を失ったりすることもあるため、逆効果。

何より、本人自身が自分を責め、恥ずかしいと思っていることが少なくありません。追い打ちをかけるのではなく、できるだけミスをしない環境を整えてあげましょう。

たとえば、仕事の手順を間違いがちな人には、その人専用のチェックシートを作って、毎回確認させるようにします。

また、ペアとして先輩を一人つけ、誤字脱字や計算などの確認をしてもらう代わりに、本人は他にできる方法で先輩をフォローするという方法もよいかもしれません。そうするうちに、ミスをしがちなポイントが明確になり、周りにも本人にも意識づけがされていきます。

大切なのは、「頑張れ」ではなく、ミスをしない仕組みを作ることなのです。

どうしてそれを言っちゃうの?

会社の部内飲み会に参加したTさん(28歳・男性)は、翌日の朝、みんなの前でいきなり部長にこう言い放ちました。

「昨日の部長の自慢話、長かったですね! いや~、みんな引いてましたよ」

部内には緊張感が走ったそうですが、Tさんはそんな周りの雰囲気に、逆に困惑してしまったのだとか。

周りに遠慮することなく、いつも事実を口にするTさんはASDです。

ASDの人は“自分が見ている事実そのもの”を重視し、人間関係などには無頓着なことがあります。

相手の表情や声の調子、仕草といった反応を読むことも苦手です。

上下関係で発言を変えたりせず、愛想やお世辞も使わないので、どうしても“空気が読めない人”と思われがちなのです。

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