まずは、日本の人材育成の転換点を象徴するエピソードを紹介しましょう。サッカー日本代表にまつわる話です。
ワールドカップでは「野球型」で日本が惨敗
2014年、FIFAワールドカップ・ブラジル大会でのグループリーグ初戦、対コートジボワール戦のことでした。
前半、本田圭佑のシュートが決まり、日本は1対0でリードします。ところが、後半に予想外のことが2つ起きます。
1つは、ディディエ・ドログバという選手の存在です。コートジボワールにはドログバという、イングランドのプレミアリーグで二度、得点王に輝いたこともある有名なストライカーがいました。
そのころのドログバは調子が悪かったため、日本代表は「ドログバは試合に出てこないだろう」と予測して戦術を組んでいたところ、後半17分、ドログバが選手交代でピッチに登場したのです。
もう1つは、突然、予想外の激しい雨が降りはじめたことでした。
選手たちは、この状況に対応した戦術を立て直すことができず、立て続けに2点を奪われ、2対1で逆転負けしてしまいました。これが尾を引き、その後、1勝もできず予選リーグを敗退してしまいました。
また、サッカーワールドカップでは、多くの場合、開催国が強さを発揮します。地元ブラジル代表は過去に5回も優勝を飾っていましたが、そのときのブラジル大会では、準決勝でブラジルがドイツに1対7で惨敗を喫します。それは「ミネイロンの惨劇」と呼ばれたほどで、ドイツは決勝でアルゼンチンを破り、優勝します。
この年のはじめにJリーグのチェアマンに就任した村井満さんは、なぜドイツがこのような強さを発揮したのか調査しました。
その結果、ドイツのプロサッカーリーグでは、各リーグの所属チームに対して、「選手育成力の評価」を実施していることがわかりました。
その評価の点数に応じて、協会から付与される育成支援金の額が変わるため、各チームとも「選手の育成」に力を入れていたのです。
そこで、村井さんは「評価システム」を提供するベルギーの企業を日本に招き、Jリーグの各チームを評価してもらいました。そこで、「驚きの結果」が出ました。
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