「3~4年間はストリートや店頭でやっていましたね。最初は誰も立ち止まって見てくれなくて、全然ダメでした」
右も左もわからず、特にレッスンも受けていたわけではない。そんな子がストリートや店頭に立ってパフォーマンスしても、見向きもされないのは、ある意味当然だろう。
「あるときから『ただ歌っているだけじゃダメなんだ。ちゃんと見て、楽しんでほしい』と意識して歌うようにしました。それでも最初は0~3人くらいでしたけど」
観客は多くて3人。けれども「楽しんでもらうことを意識して歌う」。これがこの頃、松山が手に入れた「最大の気づき」だった。
「100万円かかるから払って」大人たちの罠
活動をはじめて4年目。日々、ストリートや店頭でのアピールを続けながら、自身の活動に対して真っすぐに歩んできた松山に「大きな転機」が訪れる。
それは、恐ろしくもあり悔しくもある出来事だった。
「ちょうどワンマンライブが終わって少しした頃に、事務所がとある音楽プロデューサーと組んだんです。それで、『カバーだけじゃ限界だからオリジナルのアルバムを出そう』ということになって。『その費用が100万円かかる』と言われました」
音楽CDを出すのはアイドルであればひとつの目標である。ましてやストリートがメインといえどキャリアを重ねてきている。さぞ嬉しい話かと思いきやまったく違うものだった。
「その100万円、事務所が払うんじゃなくて、私が払えって言われて。さすがに『あれ?これはおかしいぞ』って思い周りに相談したら、『それはおかしいから、絶対やめな』ってアドバイスもらって。それで逃げるようにその事務所を辞めました」
松山に限らず「地下アイドルの世界」では、こういった「詐欺まがいの話」は多々ある。
「そんな話に騙される人いるの?」と思う方もいるだろうが、アイドルとして大きなステージを夢見る若者が「少しでも売れたい」その一心からあやしい話にもすがることは、多少なりとも理解できる。ゆえに騙されることがあるのだ。
事実、アイドルとして活動するためにはお金がかかる。自身のオリジナルの楽曲はもちろん、衣装代、ライブ会場までの交通費などなど。
だからこそ、残念なことではあるが、それにつけ込み、「夢を食い物にする大人」がいるのだ。
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