「首相はゴム人間」耳を疑う陰謀論に人が魅入る闇 現代人を蝕む「スマホ教」とはいったい何なのか

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しかし、そんな素晴らしい夢はいつか覚めてしまい、世俗に戻ることを余儀なくされることでしょう。どれほど心地よくとも夢は夢なのです。が、ひとたび異世界に移住してしまうと、往々にして世俗に住む人々との間に決定的な亀裂が生じています。

「ワクチンを打つと2年以内に死ぬから絶対に打たないで!」「ワクチンを推奨するおまえはDS(闇の政府)の手先だ!」などと幾度となく訴えた結果、家族や友人と離婚・絶縁になったり、すっかり世俗での居場所を喪失しているのです。

ある一時、素敵な夢を見られた代償はあまりにも大きい。そして何よりも、そんなうたかたの夢に振り回された家族や友人からすれば、迷惑以外の何物でもありません。

今後ますます深刻になっていく可能性が高い

読売新聞の特集『「ワクチン打つと体から毒出る」陰謀論へ傾倒、妻は家を出た…[虚実のはざま]反響編』(2021年9月26日)でも、豹変した家族との間で大きな亀裂が生じ疲弊する人々の姿が見て取れます。

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同記事には、自殺した俳優は陰謀で殺されたと訴える妹、東日本大震災やコロナ禍は仕組まれたものと主張し、ネットをうのみにしないよう助言すると怒り出す70代の母、マスク着用を拒否するYouTubeにはまった公務員の夫といった事例が紹介されています。

私の周囲でも似たような現象は生じていますし、皆さんも同様の話は一度や二度、耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ネット上の奇天烈な話など、低俗で取り上げるに値しないと感じる方もいらっしゃるでしょうし、実際にそうなのかもしれません。しかし、いくら下らなく思えても、そこに横たわっている問題は根深く、そして今後ますます深刻になっていく可能性が非常に高い。

連合赤軍やオウム真理教を生んでしまった歴史がある日本において、同種の存在を生み出しかねないネット空間を、私たちはもっと注視すべきではないでしょうか。

物江 潤 著述家、塾経営者

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ものえ じゅん / Jun Monoe

1985年福島県生まれ。2008年早稲田大学理工学部社会環境工学科を卒業後、東北電力株式会社に入社。2011年2月同社を退社。2019年5月現在は地元・福島で塾を経営する傍ら、フィールドワークと執筆にも取り組む。著書に『聞き歩き福島ノート』など。

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