1回500円「ブランコ」が瀕死の観光地を救った奇跡 異例の有料化でも「5時間待ち」の大ヒット!
この状況でいちばん大切なのは、コストをできるだけ削り、そのお金をいちばん大事なスタッフの雇用継続に回すことです。
しかし経営者として、「みんながつらい時期だからこそ、しっかりとした準備をできれば、世の中が好転したときに勝ち残れるチャンスが増える」という確信もありました。よくなりかけてきたグリーンシーズンの流れを止めずに、さらに新たな魅力ある話題を作ることも重要だったのです。
コストをなるべくかけずに攻めの手を打つ。そんな矛盾した課題に取り組むときにまず必要な考え方が、前回の記事で説明した「隠れた資産を見つけ出し、磨き上げること」です。
「磨けばその会社や地域にとって宝物になるのに、何らかの理由で埋もれたままになっているもの」を活用すれば、ゼロベースで何かをつくるよりもコストも時間も少なくてすみます。お客さんから見ても「なぜそこでそのビジネスをやるのか」がわかりやすく、SNSやメディアでも広がりやすくなります。大ピンチだった会社の状況から見ても、絶対に欠かせない視点でした。
私たちが目をつけたのが、白馬マウンテンハーバーの隣にある、昔のリフトの終点のプラットフォームでした。かつては展望台として機能していた場所ですが、機械類はすでに撤去し、コンクリのプラットフォームだけが残っていました。
この眺めのいいプラットフォームは「隠れた資産」に違いないと考え、ここをどうコストをかけずに次の観光資源に変えられるか、頭を悩ませることになります。
シンプルな仕掛けが伝わりやすさを生む
そこにあるのは北アルプスの絶景を眼前にした、とはいえ10坪ちょっとしかないただのコンクリの板です。隣にもっと規模の大きな、しっかりとしたカフェを備えた絶景テラス(白馬マウンテンハーバー)はあるので、ただの展望台にしても追加での価値は生みづらい。
アルプスの山を眺めながら爽快感を覚えてもらえるような、まだ誰もやっていないような仕掛けは何かないかと悩んでいたときに、テレビである家庭教師派遣会社さんのCMを目にしました。そう、あのアルプスの少女ハイジが、スイスアルプスに向かってブランコを漕いでいる、有名なシーンをパロディにしたCMでした。
「これだ!」と思った私はGoogleで「ブランコを作れる遊具メーカー」を調べ、片っ端から相談を始めます。ただし、普通の公園のブランコをそのまま作っただけではあのハイジのブランコにはなれません。普通じゃない大きさと、そこに迫力を増すひと工夫が必要です。
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