信用金庫支店長「笑いの世界」に飛び込んだ理由 笑いがあれば仕事の業績も健康もアップする

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楠木:ご家族の反応はいかがでしたか?

矢野:反対はいっさいなかったです。1つは、家族も中川さんと私の関係をよく知っていたので、「中川さんの事務所に行って、新しい仕事を始めたいねん」というふうに言ったので、あまり不安を持たれないですみました。もう1つは、その頃の私は本当に元気がなくて、家族も「このままでは倒れてしまうんやないか」と心配してくれていたのだと思います。

楠木:退職後に始められたユーモアコンサルタントは、どういう仕事なのですか?

矢野:アメリカには、ビジネスパーソンを対象にユーモアトークで自分の成績をアップする方法を伝授するといった仕事があります。最近は日本でも「ビジネスパーソンにはユーモアが必要」という認識も出てきましたので、そういうセミナーで講師をすることもありますし、笑いと健康について話すという仕事も全国であります。あとは地域の集まり、婦人会や敬老会などで落語を一席やったり、一時期は本も何冊か書きました。

楠木:信用金庫を辞めて生活に困るということはなかったのですね。

矢野:それはありませんでした。本当に中川さんのおかげです。中川さんの引きのおかげでいろいろな仕事が来ましたから。ただ、ずっと順調とはいきませんでした。一番がっくり落ち込んだのが2020年です。新型コロナウイルスが蔓延すると、ユーモアコンサルタントは三密の仕事ですから、仕事がゼロになってしまいました。最近ようやくどん底から抜け出したところです。

嫌なことは体に悪い

楠木:二つの本業を経験されてきて、今の会社員のみなさんにアドバイスはありますか?

矢野:今は、本業の仕事をしながら、自分が本当に楽しいと思うこともできるようになってきました。第二の本業で収入を得てもかまわないし、個人事務所を持ってもいいという会社も増えています。

そういう状況もあるので、若いときには「今の仕事、おもろないなあ」という理由で会社を辞めないほうがいいと思います。好きなことは、第二の本業として、やっていくのがいいと思います。

それに、好きなことを始めるのに年齢は関係ありません。リタイヤしてからだってできます。私も体が元気なうちは、やりたいことをやっていこうと思います。嫌なことやったら、体に悪いですからね。

楠木:本当にそうですね。私も矢野さんの話を聞いて元気が出ました。これからも好きなことをやっていこうと思います。今日は、ありがとうございました。

(構成:久保田正志)

楠木 新 人事コンサルタント

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くすのき あらた / Arata Kusunoki

1954年神戸市生まれ。1979年京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。人事・労務関係を中心に経営企画、支社長等を経験。47歳のときにうつ状態になり休職と復職を繰り返したことを契機に、50歳から勤務と並行して「働く意味」をテーマに取材・執筆・講演に取り組む。2015年に定年退職した後も精力的に活動を続けている。2018年から4年間、神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。現在、楠木ライフ&キャリア研究所代表。著書に、『人事部は見ている。』(日経プレミアシリーズ)、『定年後の居場所』(朝日新書)、『定年後』『定年準備』『転身力』(共に中公新書)など多数。

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