そこは、ゴミ屋敷寸前の散らかりようだった。仕事場兼自宅ということで、書類や本の上に、トレーナーやスエットパンツがグシャグシャに置かれていたり、カーテンがヨレヨレで黄ばんでいたり、棚はほこりだらけだったり……。「本当にここで第一線の仕事ができるのかしら」という惨状だったという。
みつえは、私に続けた。「そもそも店舗として作られている部屋なので、お風呂がないんですよ。キッチンも給湯室という体で。『お風呂はどうしているんですか?』と聞いたら、『スポーツクラブで入って帰ってくる』って」。
「生涯現役で働きたい」「仕事が終わると近くのジムで汗を流す」と、お見合いのときにはアクティブに聞こえていた言葉が、現実を目の当たりにすると空々しく感じてしまった。
「結婚したら、私のマンションに住んで、今の家は事務所として使えばいい話なんですけど、何か言ってることと現実の生活にギャップといいますか、大風呂敷を広げられたように感じてしまったんです。もう少しお付き合いして、彼を好きになっていたら、現実を見せられても受け入れられたかもしれないけれど、お見合い後の最初のデートだったで、気持ちがすっかり冷めてしまいました」
こうして、しんいちろうとの交際も、終了となった。
50代、60代の結婚、再婚が難しい理由
そこからもいくつかお見合いをし、最終的にみつえは地方の教育機関で働くしょうじ(61歳)とご縁があり、成婚をしていった。お互いに現役で働けるうちは週末の通い婚生活を送るという。
そして、「現役を引退したときにどんな生活をするかは、2人でゆっくり話し合って決めていきたい」と言っていた。
50代、60代の結婚は、それぞれのライフスタイルができあがっている男女が、1つ屋根の下で暮らすことになる。また、この年代の結婚は、子どもを授かって家族を作るわけではない。これまで積み上げてきた仕事のキャリアや経験を踏まえ、残りの人生をパートナーと楽しく豊かに生きていくためのものだ。
焦らずに、自分の価値観や生活スタイルに合う相手を探せばいいと思う。現役で仕事をしているうちは、みつえやしょうじのように週末婚でもいい。お互いに何かあった時には駆けつけてくれる、そんな相手がいるだけでも心強いのだから。
仲人として、この世代の婚活者を見て感じるのは、男性(ことに、初婚)は、仕事はできても、精神的に自立できていない人が多い。かたや、この年代の独身女性(ことに、初婚)は、バリキャリの自立型が多い。だから、女性が同世代の男性を見ると、“お金はしっかり稼いでいても中身は幼稚”に感じてしまうのだ。
そうやって考えても、50代、60代の婚活は難しいのだが、やはり、1人より2人。寄り添える相手がいたほうが、幸せな人生の最終章が送れる。筆者はそう思うのだが、いかがだろうか?
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