56歳女性が見た、難渋するシニア婚活男性の現実 50、60代の結婚の困難さは当人の問題にある?

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そこは、ゴミ屋敷寸前の散らかりようだった。仕事場兼自宅ということで、書類や本の上に、トレーナーやスエットパンツがグシャグシャに置かれていたり、カーテンがヨレヨレで黄ばんでいたり、棚はほこりだらけだったり……。「本当にここで第一線の仕事ができるのかしら」という惨状だったという。

みつえは、私に続けた。「そもそも店舗として作られている部屋なので、お風呂がないんですよ。キッチンも給湯室という体で。『お風呂はどうしているんですか?』と聞いたら、『スポーツクラブで入って帰ってくる』って」。

「生涯現役で働きたい」「仕事が終わると近くのジムで汗を流す」と、お見合いのときにはアクティブに聞こえていた言葉が、現実を目の当たりにすると空々しく感じてしまった。

「結婚したら、私のマンションに住んで、今の家は事務所として使えばいい話なんですけど、何か言ってることと現実の生活にギャップといいますか、大風呂敷を広げられたように感じてしまったんです。もう少しお付き合いして、彼を好きになっていたら、現実を見せられても受け入れられたかもしれないけれど、お見合い後の最初のデートだったで、気持ちがすっかり冷めてしまいました」

こうして、しんいちろうとの交際も、終了となった。

50代、60代の結婚、再婚が難しい理由

そこからもいくつかお見合いをし、最終的にみつえは地方の教育機関で働くしょうじ(61歳)とご縁があり、成婚をしていった。お互いに現役で働けるうちは週末の通い婚生活を送るという。

そして、「現役を引退したときにどんな生活をするかは、2人でゆっくり話し合って決めていきたい」と言っていた。

50代、60代の結婚は、それぞれのライフスタイルができあがっている男女が、1つ屋根の下で暮らすことになる。また、この年代の結婚は、子どもを授かって家族を作るわけではない。これまで積み上げてきた仕事のキャリアや経験を踏まえ、残りの人生をパートナーと楽しく豊かに生きていくためのものだ。

焦らずに、自分の価値観や生活スタイルに合う相手を探せばいいと思う。現役で仕事をしているうちは、みつえやしょうじのように週末婚でもいい。お互いに何かあった時には駆けつけてくれる、そんな相手がいるだけでも心強いのだから。

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仲人として、この世代の婚活者を見て感じるのは、男性(ことに、初婚)は、仕事はできても、精神的に自立できていない人が多い。かたや、この年代の独身女性(ことに、初婚)は、バリキャリの自立型が多い。だから、女性が同世代の男性を見ると、“お金はしっかり稼いでいても中身は幼稚”に感じてしまうのだ。

そうやって考えても、50代、60代の婚活は難しいのだが、やはり、1人より2人。寄り添える相手がいたほうが、幸せな人生の最終章が送れる。筆者はそう思うのだが、いかがだろうか?

鎌田 れい 仲人・ライター

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かまた れい / Rei Kamata

雑誌や書籍のライター歴は30年。得意分野は、恋愛、婚活、芸能、ドキュメントなど。タレントの写真集や単行本の企画構成も。『週刊女性』では「人間ドキュメント」や婚活関連の記事を担当。「鎌田絵里」のペンネームで、恋愛少女小説(講談社X文庫)を書いていたことも。婚活パーティーで知り合った夫との結婚生活は19年。双子の女の子の母。自らのお見合い経験を生かして結婚相談所を主宰する仲人でもある。公式サイトはコチラYouTubeも開設。

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