2006年がんで逝った男が遺した言葉に見えた情景 家族の懊悩と真贋と時代の空気が今にも残る

ハリスさんがブログを始めたのは2005年11月。趣味のパチスロについてつづるためにブログサービス・Amebaのアカウントを取得したことは、ユーザー名に好きなパチスロ台の名前を盛り込んでいることからもわかる。

「ふっらふらおぢぃ～(*￣(ｴ)￣*)」のトップ画面

生まれも育ちも関西で、実家からほど近い住まいに妻と3匹の猫と暮らしている。家電メーカーの商品開発の製作に携わる仕事を生業としており、その仕事の合間にパチスロをたしなむことが何よりの楽しみだ。

妻は「情熱の国」出身の外国の人。友人との飲み会で知り合って一目惚れしてプロポーズしたという。ブログを開設した時期は日本語学校に通っていたようで、当初はハリスさんの趣味に渋い顔をしていたが、誘われるうちにパチスロにハマっていった様子がブログを通して見えてくる。

パチスロに興じる2005年12月の投稿

ハリスさんが好む顔文字や行間を多用する文章は、2000年前後のテキストサイトなどでしばしば見られた手法で、ブログブームが起きていた2005年前後も一部で見られた。おそらくは以前からネットでのコミュニケーションに親しんできた人物だと思われる。

その書き慣れた筆致から、仕事に手を抜けない真面目な性格や、自虐しながら妻や読者を思いやる穏やかな人柄が見えてくる。同好の士のブログにも頻繁にコメントを書き込んでおり、ほぼ毎日更新する日記には自然と常連読者の書き込みがつくようになった。

検査入院で「でっかい潰瘍」が見つかる

そんな日常に影が差したのは2006年2月のことだ。2月10日の日記を最後に1週間以上も音沙汰がなくなった。ようやく新たな投稿がなされたのは21日だった。

ストレッチャーで病院に運ばれ、そのまま入院することになる。2日にわたって痛み止めの点滴を受け、全身の検査には1週間かかった。