このような状況の中で、発足した日銀の新執行部は内部でもめていた。「とにかく市場で波乱を起こさないように現状維持で行こう」という薔薇色桃子新副総裁と、「国債市場の仮死状態をこのまま続ければ本当に国債市場は死んでしまう」と懸念する赤色勇新副総裁と、意見が激しく対立していた。
金利ターゲットは0.25%、指値オペは0.5%に?
灰色総裁は、強硬に政策変更を主張する赤色副総裁に尋ねた。「では、君はいったいどんな具体案があるというのか?」
「ここは、YCCを結局は終了しなくてはいけません」
「それでは、奴らは、われわれを攻撃してくるだろう! どうするんだ!」
「いずれにせよ、YCCはやめないといけません。そのときはいずれ攻撃を受けます。もうすでに国債市場の歪みは拡大していますが、遅らせれば遅らせるほど、ひどくなってしまいます」
「いきなりYCCを止めたらどうなると思っているだ!ただじゃすまないぞ!」
「もちろんです。いきなりはやめません」
「は? なんだ。やめないのか。じゃあ、どうするんだ?」
「ターゲットをゼロ程度から、0.25%に引き上げます。乖離許容幅は0.25%のままです。そこで、指し値オペは0.5%にします」
「それじゃあ、利上げじゃないか! メディアがついに『日銀利上げ、市場圧力に屈した』と書き立てて、俺は記者会見で攻め立てられるぞ!」
「仕方ありません。いきなりYCCを終了すれば、10年物の金利がどこまで上がるか、まったく予測できません。市場も同じです。乱高下で大混乱します。0.25%ターゲット、指し値0.5%のほうが、はるかにましです」
「甘い! それじゃ、次の利上げを狙って、市場は国債を売り浴びせてくるぞ。それこそ大混乱だ」
「そこで、その次の会合で、また0.25%引き上げます」
灰色総裁は気色ばんだ。
「それでは、追い込まれっぱなしじゃないか」
「はい」
「はい、じゃないだろ!」
「その次の会合で、0.75%ターゲットとし、乖離許容幅0.25%とすると上限は1%となりますが、ここでは、指し値オペを0.9%にして、とことん買い支えます」
「どういう意味があるんだ?」
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