発がん性についても問題視されています。2021年の日本の研究では、2万6千人の日本人男性を20年近く追跡調査した結果、牛乳などの乳製品の摂取量が多いと前立腺がんの発症リスクが増加するとされました。
また、アメリカで5万人以上を対象とした2020年の大規模研究では、牛乳の摂取量が多い人ほど乳がんのリスクが高くなりました。ただし、2019年の別の研究では、牛乳や乳製品を継続的に摂取しても、乳がんとは無関係という結果も出ています。
牛乳を飲むなら、低温殺菌でノンホモジナイズ牛乳を
このように、研究の内容や研究者の違いによって結論はさまざまです。もうしばらく最新の研究を待つしかないのですが、問題があるとされている食品をあえて積極的にとる必要はないと、ボクは考えています。
「絶対にやめましょう」とは言いませんが、嗜好品程度に飲むのがいいでしょう。特におなかを壊しやすい人や、アレルギーのある人は、いったんやめてみると体調がよくなるケースもあります。
牛乳にはタンパク質もカルシウムもビタミンも含まれていますが、ほかの食品からとることだってできるのです。ヨーグルトに含まれる乳酸菌は味噌やぬか漬けからとれます。ビフィズス菌は動物性の発酵食品からしかとれないのですが、プロバイオティクス・サプリや食物繊維などをとることで腸内環境を改善することは可能です。
「牛乳は好きなので飲みたい」という人は、低温殺菌のノンホモジナイズ牛乳をおすすめします。市販の牛乳の多くは高温殺菌し、乳脂肪分を均質化(ホモジナイズ)されています。そうではなく、搾った牛乳をなるべく本来の形に近い状態で摂取したほうが消化にはよいです。
私はモンゴルの遊牧民やタンザニアのマサイ族、ダドガ族など、牛乳を主食にしている民族の生活を現地で調査し、身近で見てきました。彼らにはアレルギーもなく、消化不良を起こすこともなく、強靭な肉体をもっています(ただ、突然死が多いんです)。
実は、彼らは日本人と同じく乳糖不耐症が多いため、その背景には、牛乳そのものの質もあるのではないか、とも考えています。