習近平は「台湾統一」攻勢を強めても急がない 台湾への武力行使をできない中国の本当の事情

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党大会は10月22日、党規約の修正も採択し、「台湾独立に断固反対し抑え込む」との表現が盛り込まれた。これまでの党規約では「台湾」の文字は入らず、「祖国統一」だけをうたっていた。その意味では、今後、台湾統一攻勢は強まるだろう。

習演説を受けて、アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は10月17日、スタンフォード大学で「早期に再統一を目指す決意を固めた」と述べた。アメリカ海軍作戦部長のマイケル・ギルデイ大将も10月19日、アメリカのシンクタンク「アトランティック・カウンシル」で(侵攻の)「時間軸を想定して議論する場合、2022年、あるいは2023年の可能性まで考慮すべきだと考えている」と述べた。だが、いずれもその根拠や客観的な理由には触れていない。

アメリカが乱発する台湾有事を煽る発言

ここで思い出すのは2021年3月、アメリカのインド太平洋軍司令官だったフィリップ・デービッドソン海軍大将が上院軍事委員会で、「中国軍が2027年までに台湾に侵攻する可能性がある」とした証言だ。

デービッドソン氏の証言は、今から考えれば2021年4月の日米首脳会談にむけ、台湾を念頭に日米同盟強化に日本を取り込むための「地ならし」と世論工作だった。首脳会談では①台湾問題を半世紀ぶりに言及、②日米安保の性格を「地域安定装置」から「対中同盟」に変更、③台湾問題で日本を主体的に関与させるため防衛予算を大幅に増やすことをうたった。

アメリカの同盟強化の意図は何か。バイデン大統領が台湾問題を米中対立の「核心」に据えたのは、アメリカ1国ではもはや中国に対抗できないからだ。同時にこの間のバイデン政権の台湾問題での挑発「行動パターン」をみると、①アメリカが挑発し中国に競争するよう仕向ける、②中国に軍事的、経済的に「過剰対応」を引き出させる、③国内外で中国の威信や影響力を喪失させることが読み取れる。アメリカのナンシー・ペロシ下院議長の台湾訪問に中国が大規模軍事演習という「過剰対応」で報復したのはその例だ。

それによって中国の台頭を抑え、アメリカの一極覇権を維持するのが目的だ。言い換えれば、台湾問題でアメリカが望むのは緊張緩和ではなく激化といってもいい。バイデン政権が仕掛ける米中対立の構図から読み込むと、「武力行使を否定しない」とする習発言は、状況対応型であることが理解できる。

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