「台湾海峡は中国主権」発言で見える中国の思惑 国連海洋法条約に未加盟のアメリカの弱点を突く

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中国海軍の艦艇に掲げられた海軍旗(写真・2019 Bloomberg Finance LP)

中国政府が台湾海峡について、アメリカと台湾が主張する「国際水域」とする主張を否定し、中国が「主権と管轄権を有する」との法的地位を初めて表明した。台湾側は「台湾併呑の野心の表れ」として武力行使への警戒を強めるが、果たしてそうだろうか。米中対立が激化する中、発言の意図を読み解く。

中国「国連海洋法には国際水域はない」

中国外務省の汪文斌報道官は2022年6月13日の記者会見で、「中国軍当局者は台湾海峡が国際水域ではないと主張しているが、外務省のコメントは」との質問に次のように答えた。

① 台湾は中国の不可分な領土の一部、② 国連海洋法条約と中国国内法では、台湾海峡の海域は海峡の中心線に向かい両岸の海岸から延伸し、中国の内海、領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)の順、③ 中国は台湾海峡に対する主権および主権権利と管轄権を有し、当該海域における他国の正当な権利を尊重する、④ 国連海洋法には「国際水域」(international waters)は存在しない、⑤ ある国は台湾海峡を「国際水域」と呼んでいるが、これは台湾問題に干渉・操作し、中国の主権と安全保障に脅威を与える口実であり反対。

中国はこれまで、台湾海峡を中国EEZ(排他的経済水域)の一部と主張してきたが、「国際水域」を否定し、主権と管轄権が及ぶ法的地位を明確にするのは、これが初めてだった。②の主張は、中国主権論に基づく「EEZの範囲」の解釈であろう。

台湾海峡上空では、中国軍機が台湾防衛識別圏(ADIZ)に大量進入し、一方でアメリカ軍機もたびたび台湾領空を飛行し、台北の空港を離発着、アメリカ米軍艦が頻繁に台湾海峡を通過するなど、海峡の海上と上空で、米中軍事的緊張が高まってきた。そんな折の発言だけに、中国がアメリカ軍艦船や軍機の活動を妨害する「新たな軍事行動」に出るのではないかなど、その意図と狙いをめぐってさまざまな観測を呼んだ。

まず台湾の反応だ。台湾外交部は2022年6月14日の記者会見で、「台湾海峡は国際水域だ。台湾の領海以外は国際法が定めた公海であり、自由航行の原則が適用される」と反論した。その狙いについて「故意に国際法の規則をねじ曲げ、台湾海峡を中国の排他的経済水域と矮小化するのは、台湾併合の野心の表れ」と、台湾への武力行使への警戒をあらわにした。

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