印象的だったのは、2022年5月に東京の二子玉川で開催された、死をテーマにした展覧会『END展 死から問うあなたの人生の物語』(主催/東急、東急ラヴィエール、Whole Universe)の会場だ。筆者が訪れたのは平日の昼過ぎだったが、会場は事前予約の人数で常にいっぱいになっていた。
END展はマンガ作品のひとコマから「老い」や「死」について考えるという催しで、会場には「死者はすぐそばにいると思いますか?」や「お葬式はこれからも必要でしょうか?」といった死に関する問いとマンガのコマが並べて展示してある。
展覧会でキュレーターとディレクターを務めた塚田有那さんによると、14日の間に目標の2倍近い9600人超の人が足を運んだそうだ。50代から60代の人を第一ターゲットと想定していたが、アンケート回答を参照すると、来場者の6割超が10代と20代だった。性別では女性66%に対し、男性は27%だったという。
「若い人の来場も想定していましたが予想以上でした。アンケートを読むと、『マンガをベースにしていることで、悲しい気持ちにならず、理解しやすかった』、『生き死にを考えるきっかけになった』といった声が多く、そこは世代の差は感じませんでした」(塚田さん、以下同)
どの年代であっても死と向き合う機会を求めている現れだと思う。そこに新しい死の風習が定着する可能性を感じる。そのなかのひとつの選択肢としてデジタル故人が入り込む余地もあるのではないか。
デジタルで育ちやすいのはファンカルチャー
END展は2021年10月に刊行された書籍『RE-END 死から問うテクノロジーと社会』(編著・塚田有那、高橋ミレイ/HITE-Media)とコンセプトやスタッフを共有しており、テクノロジーと死との関わり合いについての思索も根底にある。展示のなかに「もし死者とVR上などで再開ができるとしたら会いたいですか?」といった問いもあった。
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