「怒りや悲しみ」と向き合える子に育てる親の心得 まずは「感情のラベリング」を手伝ってあげる

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(画像:『きみのこころをつよくする えほん』)

また、感情に気がつき、言語化していくことは、自己理解だけではなく他者理解にもつながり、「共感力」を育てることにつながります。

レジリエンスマッスルを育てよう!

レジリエンスをはじめとする心の力は、体の筋肉を育てるのと同様に、普段の練習や工夫によって育てることができます。絵本の中では、「自分の素敵なところ」「自分が好きなこと」「最後までがんばったこと」「好きな人や困っているときに助けてくれる人」の4つの質問に答えることで、レジリエンスの筋肉を育てられることをご紹介しています。

きみのこころをつよくする えほん
『きみのこころをつよくする えほん』(主婦の友社)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

先に、感情との上手な付き合い方についてお伝えしましたが、ネガティブ感情に対応するだけではなく、ポジティブな感情を活用することで、レジリエンスを育てることができることがわかっています。

うれしい、楽しい、興味がある、リラックスした気持ち……そんなポジティブ感情も子どもと共有することは、親子の絆を作ることにつながります。

親が子どもの気持ちをしっかりと受け止めて心の安全基地となると、どんどん挑戦をして、世界を広げていきます。時に、うまくいかずに落ち込んでしまうことがあったとしても、親子の絆が子どもの心の回復力になるのです。

困ったことがあったときだけではなく、普段の生活の中で、子どもたちのポジティブ感情を一緒にじっくりと味わい、得意なことだけではなく長所も認め、成功体験を重ねる支援をすることは、レジリエンスの筋肉を育てることにつながります。

また、レジリエンスは、個人の中で育つ力と、環境の影響とが相互しあって育っていきます。親子でレジリエンス教育に取り組むことで、個々のレジリエンスだけでなく、家族としてのレジリエンスが育っていくというメリットがあるのです。

筆者の講座を受けてくださっているお母さんと7歳の男の子が、お父さんがすごく疲れて帰ってきてイライラしていたから、「一緒に深呼吸をやろう」といってみんなでやりましたと報告してくれたこともあります。お父さんも「呼吸するだけでこんなに気持ちが変わるんだね!」と驚いていて、次の回から家族3人で講習を受けてくれました。

この大きな変化の時代に、日々の生活の中でしなやかな強い心を育てることができれば、これからの人生でどのようなことがあっても乗り越える力となっていきます。そのためにも、「感情と上手に付き合う力」を幼少期から身につけることを意識するといいでしょう。

足立 啓美 一般社団法人日本ポジティブ教育協会代表理事

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認定ポジティブ心理学コーチ。メルボルン大学大学院ポジティブ教育専門コース修了。国内外の教育機関で10年間の学校運営と生徒指導を経て現職。現在は、ポジティブ心理学をベースとした教育プログラムの開発、小学校〜高校、適応指導教室などさまざまな教育現場で、レジリエンス教育の講師として活躍中。ポジティブメンタルヘルスや組織開発にかかわる企業研修、ポジティブ心理学コーチとして管理職向けコーチングも行う。共著に『子どもの「逆境に負けない心」を育てる本』(法研)、『イラスト版子どものためのポジティブ心理学』(合同出版)、『見つけてのばそう! 自分の「強み」』(小学館)がある。

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