そもそも、自社株買いの取引に関わった者が公開前の重要事実を知っていたかどうかを外部から判断するのは極めて困難である。かといって、その判断の基準を、自社株買いを行う上場会社に委ねてしまえば、どうしても恣意性が働きやすくなる。前述した金融庁のQ&A資料でもインサイダー取引規制に違反しない形式を示してはいるが、金融当局には上場企業の自己株取得の取引について、より厳格な姿勢と方針が求められる。
決算会見で永守会長は何を語るのか

日本電産創業者の永守重信会長。写真は2022年6月の株主総会後の会見(編集部撮影)。
ある大手上場会社の幹部は、「経営トップが自社株買いに関わることは、インサイダー規制のルール以前に、常識から言っても絶対にあってはならないこと」と話す。日本電産は筆者が前回の記事で指摘した自社株買いの不適切な処理の疑いについて、「一切事実ではない」としている。それは永守会長が自社株買いに関与することに対し、「一点の曇りもない」と主張しているかのようだ。
10月24日、日本電産は中間決算の記者会見を開く予定だ。企業統治体制の充実・強化に努める「王道経営」を掲げる同社が、永守氏がどのように説明するのか注視したい。
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