和田秀樹「家族が認知症になったとき大切なこと」 認知症の介護で最も重要なのは「聞く力」

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認知症に限らず、介護全般において、「親や伴侶のケアは家族がするものだ」という意識は捨てましょう。疲れやストレスを増やしながら介護を続ければ、ほぼ間違いなく、認知症になった親や伴侶を憎むようになります。そうなると、不幸な結末になってしまうことが少なくありません。

どの分野でも、素人はプロにかなわないものです。介護の分野もプロにはかないません。「親のことは自分が一番よくわかっている」と思うかもしれませんが、認知症という病気や患者さんの対応は、知識と経験をもっているプロのほうがずっとよくわかっています。改めてお伝えしますが、認知症になってしまった本人を嫌いになってしまったら、いつか終わる介護のあとも複雑な気持ちを持ち続けることになるでしょう。そんな思いを抱えるなら、嫌いになる前にプロに頼ることをおすすめします。

どこにも出せなかった思いを語る

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また、情報交換の場として「認知症カフェ」を利用してみるといいかもしれません。認知症カフェは、NPOなどの非営利団体が主に開催する交流の場で、認知症の人やその家族、地域の人などがそこに行って、会話を楽しんだり情報交換をしたりできます。認知症の医療やケアの専門家がいることもあり、さまざまな相談ができたり、必要なアドバイスをもらったりすることもできます。

このような場に行って、家族の人同士が会話すると、介護の疲れが癒やされることが多いものです。私も20年以上認知症の家族会を主宰していますが、そのようなことで救われたという声はしょっちゅう聞いてうれしくなります。

同じ境遇で同じような苦労をしているので、少し話しただけでも互いに気持ちを深く理解できます。それで苦労が減るわけではないのですが、どこにも出せなかった思いを語るだけでも、心理的な負担感が軽くなるということはよくあります。また介護の思わぬ工夫が聞けることもあります。インターネットで検索すると、自治体のホームページなどで開催情報が掲載されています。チェックしてみてください。

和田 秀樹 精神科医

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わだ ひでき / Hideki Wada

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学校国際フェロー、浴風会病院精神科医師を経て、現在は和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わる。『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『60歳からはやりたい放題』(扶桑社新書)、『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)など著書多数。

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