和田秀樹「家族が認知症になったとき大切なこと」 認知症の介護で最も重要なのは「聞く力」

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私の世代はちょうど「中学受験」が進学の1つの選択肢になり始めたころでした。ただ、当時の公立小学校の先生たちは理解がまだなく、中学受験に悪い印象をもっているところもありました。私は、それでも全国的に知られる私立の中学に進学し、そこから東京大学に進学しました。

母に当時の中学受験のことを聞いたら、きっと当時の苦労話が聞けるでしょう。もしかしたら「お前のことを中学受験させるときは大変だったんだよ」と話してくれるかもしれません。そんな話になったら、じっくり聞いてあげたいと思います。

特別な経験の記憶であれば、認知症になっても長く残り続けます。繰り返し話したがることも多いでしょう。ただ、認知症の症状が進むと、話が続かなくなります。話し尽くせないところを見つけて質問をしてあげましょう。

子どもが中学受験をした家庭なら、親に「小学生の私を進学塾に通わせたとき、学校の先生はなんていっていたの?」と質問をしてもいいのかもしれません。もしかしたら「小学校の先生とは喧嘩しながらお前を塾に通わせたんだよ」というような話が出るかもしれません。

機嫌がよくなるなら、どんな話題でもいい

先に例として出した元ビジネスパーソンの父親なら、「自動車を初めて買ったとき、子どもたちはどんな反応をしていたの?」と尋ねてみるのもいいでしょう。「覚えてないなあ」と返ってくる可能性もありますが、「お前たちはとても喜んでいたよ」といって家族でドライブに行った話に発展できるかもしれません。

どんな話題でもいいのです。機嫌がよくなる話題を探し出してストックしておく。こんなひと工夫で認知症の介護が楽になります。

認知症の人であっても、理由なく不機嫌になることはありません。何か不愉快なことなど、きっかけがあったからこそ不機嫌になるのです。例えば、本人の要求に対して無視をしたとか、家族が「同じことを何度言わせるの!」というNGワードを口にしてしまったとか、何かしら理由があるはずです。

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