物価高でもまるで平気な大企業に補助は必要ない 直撃している消費者と負担増の零細企業が犠牲者

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次に、資本金10億円以上の企業を見よう。これらのほとんどは、上場企業と考えられる。以下では、この資本金階層の企業を「大企業」と呼ぶことにする。

大企業の場合は、売り上げ増が、売り上げ原価の増を上回っている。つまり、コストの増加をすべて売り上げに転嫁し、それ以上に売り上げが増えている。この結果、粗利益(売り上げ原価)が増加している。対前年増加率は5.4%だ(増加率は、表には示していない)。

その結果、利益が大幅に拡大している。対前年比で見ると、営業利益は1.35%の増、経常利益は20.1%増となっている(増加率は、表には示していない)。

円安、物価高騰下で、上場企業の業績が好調なのは、このように、原価の高騰を売り上げに転嫁しているからだ。

なお、大企業の場合、対前年増加率で見ると、原価上昇率が売り上げ減少率より高い。しかし、粗利益の増減に影響するのは、増加率ではなく、増加額だ。

下請け構造がもたらす歪み

以上で見たように、製造業の場合に、コストの増加をどれだけ転嫁できるかは、企業規模によって非常に大きな違いがある。この原因は、下請け構造にあると考えられる。

製造業の場合、消費者に直接販売するのは大企業が中心であり、中小零細企業は、より規模が大きい企業の下請けになっている場合が多いと思われる。

下請けの市場は、経済学が想定している完全市場とはきわめて異質なものだ。すなわち、多数の売り手と多数の買い手によって競争的に価格が形成されるのではなく、少数の参加者による相対的な取引で価格が決定される。

多くの場合、1つの企業の同一製品について、複数の下請け企業がある。そして、下請け企業から見ると、発注先は1つの企業である場合が多い。

こうした状況では、下請けの零細企業は原価が高騰しても、それに見合うだけの製品価格引き上げを発注大企業に要求できない。それどころか、値下げを要求される場合もあると報道されている。

図表1には、まさにそうした構造が現れている。

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