トヨタは16日まで生産停止に加え再開見通し不明、国内3極構想に打撃【震災関連速報】

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トヨタは16日まで生産停止に加え再開見通し不明、国内3極構想に打撃【震災関連速報】

トヨタ自動車は、東日本大震災の影響による部品調達難などを受け、14日から国内全工場と系列車体メーカーの操業を停止している。すでに16日までの稼動停止を決めているが、被害状況の詳細を確認中だとして再開見通しは不明のままだ。

東北地方でのトヨタの生産拠点としては、系列車体メーカー、関東自動車工業の岩手工場(岩手県胆沢郡金ヶ崎町)、同じくセントラル自動車の宮城工場(宮城県黒川郡大衡村)、また100%出資の部品メーカー、トヨタ自動車東北(宮城県黒川郡大和町)がある。

黒川郡にはほかに、ハイブリッド車向け電池の一部を製造するプライムアースEVエナジーも宮城工場(大和町)を構える。トヨタにとって東北での一大集積地である黒川郡に向け、震災発生翌日の12日には支援部隊の第一陣が愛知県を出発。食料、非常用トイレ、紙おむつなどを乗せたトラック9台、水を積んだタンクローリー6台、燃料を積んだタンクローリー2台が13日に現地へ到着した。翌14日には第二陣も現地入りした。

トヨタでは東北を愛知、九州につぐ国内第三の拠点と位置付けており、とくに小型車生産の主力とする構想を持っている。そのために、今年1月にはセントラル自動車・宮城工場を稼動させたばかりだった。関自・岩手では、ヤリスセダン(日本名ベルタ)、ラクティスなどを生産。セントラルでもヤリスセダンを製造しているほか、近々閉鎖される相模原工場から3月末にカローラ・アクシオ生産を移管することも決まっている。これら量産車種の生産停止が長引けば、収益面で大きな打撃だ。

また、グループ内で懸念されているのは、プライムアースEVエナジー宮城工場に代表されるハイブリッド車関連部品の調達が滞ること。トヨタでは、2012年末までに11車種もの新型ハイブリッド車を投入予定で、関自の岩手工場でも今年末からヴィッツをベースにした小型ハイブリッドを生産することが決まっている。ハイブリッド車の増加に伴い、付加価値の高い部品の内製化率を高めることは、トヨタにとって単体赤字から脱出するうえでの切り札だ。トヨタでは2012年3月期中に単月ベースで単体を営業黒字に転換させることを目指しているが、今回の震災はその見通しを大きく狂わせることになりかねない。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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