9年前に予見された「研究者大量雇い止め」の戦犯 必然の結果を防げなかった責任は誰にあるのか

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これに対し、自公の政治家が動いた。国会議員5人(自民党衆院議員の塩谷立氏、渡海紀三朗氏、大塚拓氏、公明党衆院議員の斉藤鉄夫氏、伊藤渉氏)が議員立法として、研究者らの無期転換申込権発生までの有期雇用期間を倍にする「10年特例」を含む「改正 研究開発力強化法」を2013年11月に国会に提出。採決では民主党なども賛成に回り、同年12月に成立した。

当時の詳細な経緯や背景をまとめた書籍『改正研究開発力強化法』(科学新聞社、2015年発行)には、2014年に行われた山中氏と国会議員らの対談が収められている。

その中で、山中氏は「10年特例」に「かなりの人は安心されたと思います」と謝意を述べつつ、「10年後にはそういう方々がクライシスになりますから、それはまた何とか対策を立てないと、今30歳の人は40歳になり、40歳の方は50歳になっていよいよ転職が利かない年齢になってきます」と懸念を示していた。そのうえで、「そこをまた次の問題として、国の制度(による対応)も必要」と指摘していた。これに対し、国会議員らも同意していた。

厚労省も文科省も制度には手をつけず

では実際、「10年特例」ができて以降から今までに国は何をしたのか。厚生労働省・労働関係法課の小川武志課長補佐は「厚労省としては、無期転換ルールを逃れる目的での雇い止めはしないように、周知徹底を図ってきた」と話す。

しかし、無期転換を強いるには安定財源が足りない構造が、雇い止めを誘発しているのは上述の通りだ。山中氏が述べていたように国の制度自体を何らかの形で変えなければ、いくら「周知徹底」をしたところで大量の雇い止めを防げない。

研究者を無期転換の対象に含める労働契約法自体が妥当なのか。ルールの見直しを含めて制度の適切な在り方を検討してきたか。その点を問うと、小川氏は「改正労働契約法の原則を変える特例自体を文部科学省の法令でやっているので、仮に研究者を無期転換の対象から外す検討をするのであれば、基本的には(所管は)文科省だ」と主張した。

厚労省からボールを投げられた形の文科省・人材政策推進室長の岡貴子氏にこれまでの取り組みを尋ねると、「研究環境の整備が進むように、さまざまな施策をしてきている。例えば、人事給与マネジメント改革により、雇用環境を整備したところに運営費交付金を手厚く配分している。ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドラインも設けている」と話す。

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