経営目標に「非財務KPI」、導入進むも玉石混淆 ストーリー見えない「アリバイ工作」的目標も
中期や長期の経営計画のKPI(重要業績評価指標)に、営業利益やROEといった財務の目標だけでなく、非財務の目標を盛り込む企業が増えてきた。変化の激しい時代に、成長への道筋を可視化することで企業評価を高める効果などがあるようだ。一方で、有識者からは「機関投資家からの評価稼ぎ目的で、中身のないものが多い」という指摘も出ている。
旭化成は、この4月から始まった3カ年の中期経営計画(2022年度~2024年度)の中で、中計としては非財務KPIを初めて打ち出した。
同社が重視するモビリティやデジタル、ヘルスケア関連など10の事業(GG10)関連の有効特許件数の割合を、2021年度の30%超から2030年度に50%超へ高めることや、デジタルプロ人材を2024年度に2021年度比で10倍の2500人程度に増やすことなどを重要目標に掲げた。
大坪知央IR室長は、「投資家の間では非財務情報が企業価値を評価するうえで欠かせないという認識が強まっており、ニーズや要望を重視した」と説明する。
非財務項目とはいえ、財務目標との関連性を重視した点がミソだ。項目の中には、経営基盤の強化に関わるものが多い。「経営基盤が固まれば、そこに乗っかる各事業で高いパフォーマンスが発揮できるようになり、財務のKPI、売り上げや利益も高まる」(大坪氏)という考えからだという。有効特許件数をGG10とひも付けたのも、GG10を成長エンジンに利益を拡大させる財務目標とつながっている。
「社内向け」への効果も狙う
三井化学も、2030年度までの長期経営計画に非財務KPIを組み入れている。同社が独自に重視する環境貢献製品などの売上収益の拡大、後継者候補準備率(戦略重要ポジションに就けそうな後継者候補数÷戦略重要ポジション数)や従業員エンゲージメントスコアの引き上げなどを重要目標として追いかける。
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