「脱炭素」株主提案、ウクライナ危機で潮流に変化 政策かかわる判断、投資家には不向きとの声
「今日も本当に暑いですけれども、気候変動の影響が深刻です。東電は脱炭素への具体的な行動に欠け、国内外で(石炭火力発電などへの)規制が進むことで財務リスクは大きくなります。情報開示を求める株主提案に賛同をお願いします」
6月28日朝、東京電力の株主総会が行われた東京・有明のガーデンシアター前では、会場に入っていく株主に向けて、環境NGO団体のメンバーが拡声器を使って呼びかけていた。
2020年に環境NGO団体がみずほフィナンシャル・グループに「パリ協定の目標に沿った投融資計画の策定」を求める株主提案を出し、34.5%もの高い賛成率を得て以降、6月の株主総会では「脱炭素」関連の株主提案が続いている。
今年は、複数の環境NGO団体や個人が共同で三菱商事、東京電力、中部電力、三井住友フィナンシャルグループの4社に株主提案を出したほか、フランスの資産運用大手アムンディがJ-POWERに対して株主提案をした。
焦点は賛成率に
「脱炭素」関連に限らず、株主提案はよほどのことがない限り、議決権の大多数を握る会社側が反対して否決される。今年の6月の株主総会でも、5社に出された「脱炭素」の株主提案はすべてが否決された。株主提案の内容と賛成率は以下の通りだ。
提案する側も否決は織り込み済みで、元より焦点は「どういう提案にどれだけの賛成が集まったか」という善戦率にある。
「脱炭素」の株主提案があった株主総会がすべて終わった6月29日午後、環境NGO団体が共同で開いた記者会見で、国際環境NGO「350.org」日本支部代表の横山隆美氏は、「賛成率を見て、投資家の関心が高いという印象を、改めて持つことができた」と総括した。
「脱炭素」関連の株主提案が出て3年目となる今年は、逆風も吹いた。ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けたエネルギー危機が世界を覆い、電力需給の逼迫も深刻化している。そうした環境下で脱炭素を急ぐことは、エネルギーの安定確保に反するともとられかねないからだ。
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