「脱炭素」株主提案、ウクライナ危機で潮流に変化 政策かかわる判断、投資家には不向きとの声

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同支部の渡辺瑛莉氏は「投資家からは、『エネルギー危機についてどう考えているのか』ということをよく聞かれた」と明かしたうえで、「日本の化石燃料は輸入に頼っており、そもそもエネルギー安全保障として弱い。クリーンエネルギーへの投資拡大が、脱炭素とエネルギー危機を同時に回避する唯一の道だ」と強調した。

一方、株主提案を受けた会社側からは総会での反対意見表明の中で、「企業価値向上のためには、エネルギー安定供給と気候変動対応を両立させながら実現する必要がある」(J-POWERの渡部肇史社長)といった主張が出た。

ブラックロックが批判の声明

今後、環境団体が主張するような株主提案はどこまで受け入れられるのか、懐疑的な見方もある。

企業のガバナンスや投資家行動に詳しい大和総研の鈴木裕主席研究員は、「情報開示の要求の株主提案はともかく、各国のエネルギー政策や電力会社のキャパシティが関わる企業の行動に対する株主提案を株主が適切に判断するのは大変難しい。それは経営判断事項だという考え方がある」と指摘する。

今年5月には、アメリカの資産運用大手ブラックロックが、「規範的、規制的で企業を制約するような気候変動の株主提案は、長期的な株主価値の価値につながらない」という趣旨の見解を示した。

鈴木氏は「ブラックロックのレターは機関投資家が判断できる部分とそうでない部分をわかりやすく示しており、大きな影響力を持ちうるだろう」と評する。

今回の日本の「脱炭素」関連の株主提案の大半は情報開示を求める内容であり、それぞれ2割前後の賛成率を集めた。その一方で、環境NGOが三井住友FGに対して出した、「国際エネルギー機関(IEA)による脱炭素シナリオと一貫性のある貸付」を求める株主提案は、賛成率が1割を切った。企業の行動に介入する内容だったことが影響したと見られる。

では、脱炭素の情報開示を求めるアクションにならば投資家の理解が深まっていくかと言えば、そう簡単ではない。情報開示の程度や限度に対しても、日本にも影響を与えそうな攻防が今、海の向こうで起きている。

米証券取引委員会(SEC)は3月21日、上場企業に脱炭素関連の開示を義務付ける内容の規則案を示した。脱炭素の目標のみならず、移行計画や気候変動リスクの経営への影響の説明も求める内容まで踏み込んだものだ。施行されれば日本の市場にも同様の規則が「輸入」される可能性が高いが、鈴木氏は「だいぶ不透明な状況になってきた」と見る。

米連邦最高裁は6月30日、連邦政府による発電所に対する温室効果ガス排出規制を巡り、化石燃料からクリーンエネルギーへの移行を促すような規制などを「無効」とする判断を下した。鈴木氏は「連邦政府の規制でもダメなのだから、SECが上場企業に脱炭素のさまざまな開示を義務付けようとしていることは問題化するだろう」と分析する。

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