チャン・イーモウ監督が新作に込めた想い

「文革を題材にするのはいまだタブーです」

(C) 2014, Le Vision Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved

――ヒロインが愛する人を待つという意味では『初恋のきた道』を思い出しました。そういった女性が男性を待つという物語は、チャン監督の創作意欲をそそるのでしょうか?

実は小さいときに祖母から聞いた物語が印象に残っています。それは「夫を思い続けて、石になってしまった」という妻の話でした。彼女は海辺にいて、夫が帰ってくるのを待ち続けるのです。しかし、結局夫は海難事故にあって戻ってはこない。待ち続けた果てに、妻は石になってしまった。もしかしたらその話が印象に残っていて、待ち続ける女性というモチーフが形を変えて出てきているのかもしれません。待つということは、一種の愛情表現ですから。

中国でも60、70年代の実景を撮るのは難しい

――日本では1960~70年代の街の風景を撮ることは非常に難しく、CG処理をしなければその時代の風景は撮れなくなってきています。この映画を観たときに、街の風景に懐かしさを覚えたのですが、中国ではこのような風景はまだ残っているものなのでしょうか?

チャン・イーモウ(張 芸謀)●1951年、中国西安生まれ。1987年、監督デビュー作の『紅いコーリャン』でベルリン国際映画祭金熊賞を受賞。世界にその名を轟かせる。その後も、『菊豆(チュイトウ)』(90)、『紅夢』(91)、『秋菊(しゅうぎく)の物語』(92)などで世界各国の映画賞を次々と獲得。アジアのスターを集めた超大作『HERO』(02)、『LOVERS』(04)を手掛け、大ヒットを記録。2005年には高倉健を主演に迎え、『単騎、千里を走る。』を監督。近年の主な作品は、『王妃の紋章』(06)、『女と銃と荒野の麺屋』(09)、『サンザシの樹の下で』(10)など。2008年には、北京オリンピック開会式の総監督を務めた(撮影:今井康一)

いやいや。中国ではもっと大変だと思いますよ。おそらく中国は日本よりも変化が激しいので、少し前の時代の場所を撮りたいと思っていても、今はもう本当に撮れなくなっている。今回の映画は、北京の大きな工場で撮ったんです。この工場は、空気を汚染するという理由から、北京から別の地域に移転することになっていたもので。だからもう人は住んでいなかったのですが、まだ取り壊していない建物が、まだたくさん残されていたんです。こういった景色は、北京に限らず、地方に行ってもなかなか見つからない。これは実に貴重な景色だったというわけです。

――まさに撮るべくして撮ることができた映画というわけですね。

きっとあと20年もすれば、1960、70年代の実景は撮れなくなるでしょう。その時は新しくセットを作るか、全部CGで処理するしかないでしょうね。

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