「情報過多時代」に企業と顧客を結びつける方策 アメリカIT企業のハブスポット創業者に聞いた

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――昨年の2月にThe Hustle(ザ・ハッスル)というメディアのスタートアップを買収しましたね。

われわれがインバウンドマーケティングを進化させていく中で、ハッスルは欠かせない存在だ。ハッスルは最新のビジネストレンドやテック系のニュースをニュースレターやポッドキャストで配信する新しい形のビジネス系メディアだ。特にポッドキャストは毎月900万回もダウンロードされている。

多くの企業は誰かのウェブサイトのスペースを借りる代わりに、自分たちでコンテンツを所有したいと思っている。ハブスポットも例外ではない。かつては顧客と接点を持つためのメディア運営は、フェイスブックページのような外部のプラットフォームを使わざるを得なかったが、これからは自分たちが情報の発信主体になれる。

企業にとっての「生きた教材」に

この買収によってハブスポットは法人ユーザーに対し、コミュニティや共同学習プログラムを通じて、最新のビジネストレンドを学ぶ機会を提供することができるようになった。顧客との分断に悩む企業にとっては、ハッスルはビジネス成長のヒントを得られる生きた教材となっている。

結果として、ハッスルの貢献でハブスポットユーザーの売り上げ増につながるという好循環が生まれている。企業同士のコミュニケーションも活発となり、人と人の分断を解消するという意味でも、ハッスルの果たす役割は大きい。

次世代のソフトウェア企業は、これから視聴者の注目を集めるメディアに投資するようになるだろう。

――日本市場のポテンシャルをどうみていますか?

非常に大きい。日本は中小企業が多く、テクノロジーの普及が遅れている。われわれのCRMプラットフォームが果たす役割は大きいだろう。アメリカでは90%の企業がCRMを導入しているのに対し、日本は40%だと言われている。2016年に開設した日本法人も2021年から社員を200〜250名増員し、2025年には2021年比で約4倍となる300名規模にする予定だ。

CRMの業界では、世界的にオラクルやセールスフォース・ドットコムが先駆で多くの企業を買収しそれらの機能を統合してきた。最近ではアドビもCRMの分野を強化している。ただ、彼らの巨大な仕組みは製品同士が十分連携されておらず、ユーザーインターフェースも異なる。ハブスポットはアップルのiPhoneのようにシンプルさを追求しているので、デジタルを使った営業支援に慣れていない日本市場で受け入れられる余地は大きい。

日本では、メッセンジャーアプリのLINEが企業向けの公式アカウントを提供するなど、企業と消費者のコミュニケーションツールとしての存在感が大きい。われわれには、コミュニティ構築を含めより一体的なCRMプラットフォームを提供できるという強みがあるが、一部ではLINE公式アカウントとの機能連携も進めている。

競合と見られがちなセールスフォースとも実際に顧客のデータ管理では連携しており、彼らは共同で市場を開拓していくパートナーだ。ただしCRMプラットフォームのカスタマー対応などコアな部分は自社開発するという姿勢は変わっていない。

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