「情報過多時代」に企業と顧客を結びつける方策 アメリカIT企業のハブスポット創業者に聞いた
企業が直面する「3つの分断」
――今回のイベントではビジネスシーンにおける分断を解消し、つながりを創出することを掲げています。具体的に何を目指しているのでしょうか?
企業は今、3つの分断の危機に直面している。1つ目は、社内におけるデータやシステムの分断だ。企業は平均で242のSaaS(Software as a Service、クラウド上のサービスやアプリケーション)を寄せ集めて使用しているとされる。システムやデータが連携されないまま散らばってしまっている。
2つ目は企業と顧客との分断。さまざまな情報があふれる中、顧客は売り手である企業からの情報に興味を示さなくなっている。法人向けのサービスや製品の購入を検討する買い手企業が、購買プロセスの中で売り手側企業との接触に費やしている時間はわずか17%だというデータもある。
そして3つ目は、人と人の分断だ。コロナ禍を通じリモート環境で働く人が増え、社内のメンバー間のつながりは失われがちになった。ある調査では、45%の人が職場での交流が減り、57%の人が社会的な交流が減ったと答えている。
こうした点を踏まえ、3つの分断を解消するための機能の開発・強化に取り組んでいる。
具体的には、9月から社内のデータやシステムをつなぐデータ管理や、顧客が購入に至るまでのプロセスを測定しやすくする機能を強化した。人と人とのつながりを増やすために、「Connect.com(コネクト・ドットコム)」というコミュニティ機能の提供も始めた。これにより、約15万社あるハブスポットの導入企業や導入を検討中の企業、パートナーの代理店が出会い、相互に学び合うことができるようになった(注:コネクト・ドットコムは現時点で英語版のみ提供)。
――ハブスポットは創業時から、潜在顧客を特定するための「インバウンドマーケティング」を提唱しています。近年はフェイスブックの企業アカウントやグーグル検索の活用を支援する機能を強化していましたが、企業と顧客の分断が加速する時代において、これらのツールはいまだに有効でしょうか?
企業が顧客の関心を集めるのはより難しくなっている。法人にしろ、個人にしろ、人々は現在、デジタルの情報があふれることで「オーバーロード(過剰負荷)モード」になっているからだ。
実際にグーグルの検索結果に表示されても65%がクリックされておらず、セールス用のeメールに対する顧客の返信率はパンデミックを経て40%も減少した。ソーシャルメディアのフィードに入り込んでマーケティングをするのも至難の業だ。そういった意味で、インバウンドマーケティングというアイデア自体は普遍的だが、取るべき手法は時代とともに変わっている。
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