早期ならほぼ治る大腸がん「検便」は超優秀の理由 精度高める採取のポイント、容器入れすぎ注意

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便潜血検査はアメリカで1960年代に開発されたが、ヒトの血液以外に、肉に含まれる血液や野菜にも反応したため、検査前に食事制限が必要で、検査の精度も低かった。そこで1980年代後半に日本で開発されたのが「免疫便潜血検査」だ。ヒトの血液だけを検出するので、食事制限の必要がなく、精度も高く、世界中で用いられるようになった。

医師で、国のがん対策推進協議会の委員をしている松田一夫・公益財団法人福井県健康管理協会副理事長は、「年齢調整大腸がん死亡率は欧米では減少している。一方で、日本は主要7カ国の中でもっとも高い。世界中で広く用いられている免疫便潜血検査は日本で開発されたものだが、残念ながら本家本元の日本では十分な効果が発揮されていない」と強調する。

がん検診受診率

その理由の1つは、職場のがん検診は法的な規定がないため、中小企業の社員のなかに、がん検診を受けていない人がいることが挙げられる。検診費用などがネックとなり、自営業や主婦など、がん検診を受けづらい人がいるのも問題だ。

何より、市区町村が実施したがん検診と、職場のがん検診を合わせた受診率を正確に把握する手段がない。受診率の算定は3年に1度実施する国民生活基礎調査に頼らざるをえない。自己記入によるアンケート調査では、受診時期の記憶違いや、がん検診と診療で受けた検診と混同している可能性もある。そう考えると、先に挙げた2019年の同調査の検診受診率は、過大評価された数値かもしれない。

早期に適切な治療で治るがん

松田氏は「大腸がんで命を落とすのは日本人だけ?」といった、やや刺激的なタイトルを付けて、医学専門誌や一般向けのリーフレットなどの著述、政府の検討会などを通じて、検診の体制整備や精度管理の重要性を発信し続けている。もちろん、大腸がんで命を落とすのは日本人だけではないが、松田氏がこのような表現で訴え続けているのは、近い将来、このタイトルが現実になるかもしれないという危機感があるからだ。

松田氏はこう語る。「2021年の大腸がんの死亡者数は、男女合計で5万2418人で、肺がんに次いで多い。大腸がんは節酒、禁煙、肥満防止、運動によって罹患の危険を減らすことができ、適切に治療すれば確実に治る。大腸がんで命を落とさないためには、大腸がん検診を受けることだ」。

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