早期ならほぼ治る大腸がん「検便」は超優秀の理由 精度高める採取のポイント、容器入れすぎ注意
同院消化器内科の神野正隆氏は、「精検受診率が低い理由の1つは症状がないからだろう。前回の便潜血検査で陽性だったが様子をみて、今回もまた陽性になったから受診するケースも少なくない。精検によるがん発見率は4%程度といわれ、なかには10%近くとの研究結果もある。便潜血検査で陽性となった方の25人に1人はがんが見つかるというのはけっこうな確率であり、ほかのがん種よりも高い確率で発見されることを知ってほしい」と解説する。
女性の中には内視鏡検査でおしりを見せるのが恥ずかしいと敬遠する人もいるようだ。これについて神野医師は、「検査時は紙の半ズボンをはいて受けてもらうので、おしりを人前にさらすことはほとんどない。内視鏡検査でポリープ(前がん病変)や早期がんが見つかったら内視鏡的に切除もできるので、受診を躊躇しないでほしい」と話す。
自分に意識を向けることが大事
がんの早期発見のために、検診を何度も受ければいいのかといえば、そうではない。
がん検診が議論されるときには、受けることによるメリットとデメリットが考慮される。メリットはがん死亡の減少、がん患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ:生活の質)の向上、医療費の削減など。デメリットは偽陽性(検診でがんの疑いと判定されて、精検をしてもがんが発見されない)者への不必要な検査と不安のほかに、臨床的に意味のない診断治療(広い意味の過剰診断)などがある。
これらのメリット・デメリットに対して、エビデンスのある検査法を、適切な間隔で受けることを勧めている松田氏は、「検査を頻繁に受ければいいわけではない。例えば、胃がん検診の内視鏡検査ができる市区町村はこの国の約半分。大腸内視鏡はさらに可能な地域が少ない。地域の限られた医療資源の中で、特定の人が過剰に検診を受けることで、がん検診を受けられるはずだった人が受けられなくなることも考える必要がある」と述べている。
がん検診の推進に向けた国の検討会では、検診受診率や要精検受診率の向上、市区町村での精度管理のほか、職場での検診推進などがテーマに挙げられている。さらには、精検を受けやすくする職場の環境整備、費用の公費負担なども検討課題だ。
市区町村で実施するがん検診は対象者を明確化し、その対象者がはたして受診したかどうか、その後、要精検となり精検を受けたかどうかなどを名簿で管理することも求められている。医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が叫ばれる中で、マイナンバーのポータルサイト「マイナポータル」を有効活用できないかといった意見も出ている。
がん対策を推進するヒントとなるのが、乳がん領域で取り上げられる機会が増えている「ブレスト・アウェアネス(乳房を意識する生活習慣)」の考え方だ。
これには4つのポイントがあり、①自分の乳房の状態を知る②乳房の変化に気を付ける③変化に気付いたらすぐ医師に相談する④40歳になったら2年に1回乳がん検診を受ける――という流れだ。
松田氏は、「アウェアネスは乳がんに限った話ではない。ちょっと体調がおかしいのではないかといった自分で感じる異変は、相当に正確だと考えている。大腸がんを疑うものとしては血便などがある。痔の可能性もあるが、その症状が続くならば検査を受けるのがいいだろう。ただし、結果を過信せず、陰性となっても自覚症状があって自分がおかしいと思ったら、医師に相談するのが大事なのではないか」と話す。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら