アメリカと中国が台湾巡り正当性ぶつけ合う意味 台湾の意思を置き去りに「認識の対立」へと向かう

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同6日には日米豪の外相が重ねて軍事演習中止を求める共同声明を出した。一方、3日に発せられたASEAN諸国の外相による「海峡間の展開に関する声明(Statement on the Cross Strait Development)」は、「地域の不安定性」への懸念を表明したものの、その「海峡」は台湾海峡であると明示せず、「中国」という言葉ですら「われわれはASEANメンバー国によるそれぞれの一つの中国政策を支援する」との一文に示されたのみの歯切れの悪いものであった。

同様にインドは8月12日になって初めて「現状を変える一方的な行動を避けるべき」だと間接的に中国を批判したが、中国、台湾のいずれも名指しはしなかった。

欧州委員会は中国を過剰に刺激せずに台湾に協力

これとは対照的に急速に台湾擁護を打ち出したのが欧州議会である。実はペロシ訪台に先立つ7月19日にニコラ・ベーア欧州議会副議長が台湾を訪問し、20日には蔡英文総統と会談していた。これに中国側は「台湾関連での言動に注意し、中欧関係に深刻な混乱を招くべきでない」と不快感を示していた。

9月15日に欧州議会は台湾海峡情勢の安全保障に関する決議を賛成多数(賛成424票、反対14票、棄権46票)で採択し、9月21日には「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」のメンバーが、フォン・デア・ライエン欧州委員長らにあててEUは速やかに台湾との二者間投資協定(Bilateral Investment Agreement: BIA)を締結すべきとの連名書簡を送った。

またドイツ政府も9月14日に承認した「2022年インド太平洋指導原則の進展報告」で初めて台湾に言及し、非平和的な方式で台湾海峡の現状を変更することに反対する立場を明文化している。

だが欧州委員会は、中国を過剰に刺激せずに台湾に対する経済協力を積極化する方向で調整を図った。9月13日にボレル外務・安全保障政策上級代表兼欧州委員会副委員長は議会に対し「あなた方全員を100%ハッピーにはしないでしょうし、何人かはもっと強硬な姿勢を採れと望むかもしれない」と前置きしたうえで、武力による現状変更を認めない、台湾との協力強化を継続する、1つの中国政策を維持する、この3点の実現がバランスの取れた立場だと説明している。

次ページアメリカに平仄を合わせつつも「台湾擁護」を声高に唱えず
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