今年4月の中国とソロモン諸島による安全保障協定への署名は、アメリカ、オーストラリア及びニュージーランドに衝撃を与えた。
協定そのものは非公表だが、3月下旬にSNSを通じて流出した草案(とみられる文書)の内容が、ソロモン諸島への中国軍艦の定期的な寄港や、ソロモン諸島の社会秩序の維持を支援するために中国から警察および軍隊を派遣することが可能になると解釈できるためだ。アメリカ、オーストラリアおよびニュージーランドは、今回の協定署名を中国の南太平洋における軍事基盤獲得の動きと見て警戒感を強めている。
太平洋島嶼国において各国は何を目指し、どのように行動しているのか。そして、それが日本の外交にどのような影響を及ぼすのかを考えることは、日本の国益や安全にも大きな意味を持つ。
中国による影響力拡大の動き
太平洋島嶼国は、太平洋の広範囲に点在する比較的小規模な国家群であるが、中国の海洋進出により米中双方の関心が高まっている。2018年に発表された米中経済・安全保障調査委員会(USCC)の報告によると、中国は太平洋島嶼国に関し、
② 台湾の国際的影響力低下
③ (アメリカ潜水艦の活動に対する)海洋監視能力の強化
の3点において戦略的価値を見いだしている。
中国による同地域への関与は2000年代から継続的に行われており、アメリカの同地域への関心が低い間に着実に関係を強化していた。中国は2006年に「中国・太平洋島嶼国経済発展フォーラム」を主宰し、30億元の借款を提供する旨を発表した。
2013年に中国は「一帯一路」構想において同地域に対する経済支援を強化するとした。ストックホルム国際平和研究所によると、2013年から2018年までの中国による同地域向けODAの額はオーストラリアに次ぎ2番目(約15億ドル)となった。
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