アメリカはまた、ミクロネシア3国(パラオ、ミクロネシア連邦、マーシャル諸島)を中心に安全保障面での活動を活発化している。アメリカはこれらの国と1980年代から1990年代にかけ自由連合盟約(コンパクト)を締結し、同3国に対する安全保障の責任を負うとともに国内に軍事施設を設置する権限を確保した。
現在、アメリカはパラオとミクロネシア連邦に対する軍事施設建設に向けた動きを進めており、パラオではすでに航空および海上監視用レーダーの設置が計画中であり、アメリカ国防省の2022年予算として議会承認を受けている。また、駐米ミクロネシア連邦大使館によると、政府は2021年にミクロネシア連邦政府と会談し、永続的なアメリカ軍のプレゼンス(駐留)に関する検討を進めることに合意したという。
アメリカ軍の演習も活発化している。今年6月、アメリカ軍は統合演習「バリアント・シールド」でパラオにて高度かつ実践的な統合訓練を行い、ハイマースの迅速展開訓練、無人攻撃機MQ-9の飛行試験、F-35A戦闘機と連携した地対空ミサイルPAC-2の実弾射撃訓練を行ったと発表した。
このような米中の動きに対し、地域諸国は不満を抱くとともに米中双方から利益を得るという巧みな外交を展開する動きも見られる。冷戦期の1980年代、ソ連の活動に刺激される形で米豪等の西側諸国が同地域への関与を強化したが、ソ連崩壊に伴いその関与は著しく弱まったという過去の経験があるからだ。そのため、対中抑止の文脈で関与を強化するほど、地域諸国から距離を置かれるというジレンマにアメリカは陥りつつある。
太平洋島嶼国とのイコール・パートナーシップが重要
日本にとって太平洋島嶼国は米豪等の友好国とのアクセス経路上にあり、近年はデジタルインフラとなる海底ケーブル網の一部が同地域を経由している。この戦略的に重要な地域においてルールに基づく国際秩序が維持され「自由で開かれた」状態であることは日本の国益にとって重要だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら