アトキンソン:あの話し方をみた外国人は、すごくバカにされているように感じます。というか、実際にしているのではないでしょうか。日本人は外国人にウケたと思ったようですが、外国人にウケたかどうかは、外国人が決めることですよね。
葛西:アトキンソンさんの日本に対する評価をお聞きしましょうか。
アトキンソン:データを見たうえで私の実体験をお話しすると、外国人観光客は、日本人の個人の親切心をとても高く評価しています。しかし、法人や組織に対する印象はむちゃくちゃ悪い。法人に属している人たちは、すぐに「できません」と言います。よくあるパターンは、成毛さんの寿司の話に似ています。ある定食の小鉢のこれが苦手だから、ほかの定食の小鉢と取り替えてほしいというと、すぐ「できません」と言われます。
この言葉の使い方はおかしくないですか、といつも思います。「できません」という言葉は、それをしたら違法であるとか、規制に反するときに使う言葉です。小鉢を変えないのは「できません」ではなくて「やりたくありません」でしょう。
葛西:そういう店ばかりではないと思いますが……。
日本人が豹変する理由
アトキンソン:先日、ある料亭でこんなことがありました。「大事な接待なので、くれぐれもよろしく」と伝えてあり、また、1000円とか3000円とかではない料金を払っているのにもかかわらず、10時になったとたんに部屋に従業員が入ってきて、深々と頭を下げて「閉店の時間でございます」と告げたのです。丁寧な言葉ですけれども、つまりは「すぐに帰りなさい」と言っているのです。
まだ話も終わっていないので帰らずにいたら、10分後には、今度は我々のコートを持って現れました。態度も言葉遣いも丁寧ですが、その内容、意味するところは侮辱的です。
葛西:慇懃(いんぎん)無礼は、日本人にも嫌われます。
成毛:そうなってしまうのはおそらく、現場の従業員に裁量が与えられていないことも原因のひとつだと思います。もし、そうでなければその従業員は、自分に裁量があることに気がついていない。個人が親切なのに、法人となると豹変するのはそれが理由ではないでしょうか。
ただ違う見方もできるのだと思います。裁量がないというのは、マニュアルが整備され徹底されているということです。つまり特別な心配りをできない人であっても、働くことができる。これが結果として、日本の失業率の低さにつながっていると思います。マニュアルどおりにやっていれば済む仕事を増やし、そうした仕事では、それ以上のことは求めない。このおかげで日本の雇用は安定しているのかもしれません。
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