円安でも「円は安全通貨」世界が認める歴史的背景 アメリカドル・スイスフランに並ぶ納得の理由

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各通貨の相対価値は常に変動しており、それは「通貨強弱」という見方で比較することができます。これは為替レートをもとに、過去の変動率から通貨の強弱を可視化したツール。最も勢いのある通貨は「最強通貨」。逆に下落率が高いと「最弱通貨」と呼ばれます。

コロナ禍で大きく変動する通貨価値

実は2021年、円は世界的に見て「最弱通貨」でした。その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大の市場への影響があります。2020年に世界的に景気が低迷し、そこから回復する中で欧米の株価は順調に推移。特にアメリカ企業の株を買う動きが強まったことでドルを買う市場参加者が増加、円は相対的に売られることが増えました。この動きが年間を通して継続したことで、世界的に見て円が弱くなってしまったのです。

世界にはたくさんの通貨があり、外国為替市場を通じて常に取引されています。各通貨の価値は情勢によって変動しており、円を基準に考えると、タイミングにより「円安」になったり「円高」になったりしています。では、世界から見て特に安定感のある通貨というものはあるのでしょうか? 

実は、円は多くの市場関係者から「安全通貨」と認識されています。その理由を紐解いていきましょう。

外国為替市場で中心的な役割を担うのが、基軸通貨。外国為替や国際金融取引の中心を担う通貨です。ブレトン・ウッズ体制以降、事実上の基軸通貨は一貫してアメリカドル。アメリカドルが基軸通貨である理由は、「各国政府が持つ外貨の残高が最も多い」から。

では、そもそもなぜ基軸通貨が必要なのでしょうか。

それは、「ハブとして機能する通貨があると効率的」だからです。

例えば、日本円からハンガリーフォリントに交換をするとき。まずドル=円のレートでドルに交換し、そのドルを今度はドル=ハンガリーフォリントのレートでハンガリーフォリントに交換するという取引をします。円=ハンガリーフォリントの取引は一般的にはあまり多く行われないため、アメリカドルというハブを経由することで、効率的、かつコストを抑えた取引が可能になるのです。

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