40歳で人生の83%が「終わっている」という衝撃 40~50代の後半生をどのように生きますか?

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勉強代は高くつきました。もちろん、「経営とは何か?」を深く考えさせられる貴重な経験にはなりましたが、ネット専門家としての地位は少しも築けず、一獲千金も夢物語で終わったのです。

「おれのキャリアは、ついに終わったなあ……」

ふとした拍子に、そんな言葉が口をついて出ることすらありました。自分を省みずに上ばかり見ていた私は、痛烈な洗礼を受けたのです。

なぜ失敗したのか?

そもそも、何が間違っていたのか。

何よりもまず、インターネット・ビジネスそのものを知らなかったことです。より正確に言えば、「知った気になっていた」ことでした。時代の風潮に流され、ただなんとなくのイメージだけで捉え、よくよく調べもせずに飛び込んでしまったのです。

インターネット自体は非常に大きな革新であり、可能性の宝庫であったのは言うまでもありません。見誤ったのは、その領域で実際に生計を立てていく自分自身です。もっと熟考し、もっと想像力を駆使して、インターネット・ビジネスの専門家として自分が何を目指しどこまで行こうとしているのかを考え抜く必要がありました。そうすれば、時代に踊らされる前に、

「興味が持続するかな?」と自分自身にブレーキをかけられたことでしょう。

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冷静に考えてみれば、実際そこまで興味がありませんでした。そればかりでなく、インターネット・ビジネスに活かせる強みも持っていませんでした。理系出身ですが、情報、通信、ソフトウェアといった領域は苦手で、そもそも関心が薄い。興味を引かれるのは半導体や粒子といったハードウェア領域で、それらの知識やセンスは、インターネットの世界ではほとんど必要がなかったのです。

ネットの世界はかっこいい。ベンチャーも今どきだ。「君の力を活かしてみないか」と誘われている。自分は理系だから大丈夫――そんな甘い考えで、根拠のない空気に流され、失敗したのです。

「自分は自分を知らなすぎた……」

言うなれば、自分の資産を知らなすぎました。必要なのは、自分資産の棚卸しでした。

平井 孝志 筑波大学大学院ビジネスサイエンス系教授

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ひらい たかし / Takashi Hirai

東京大学教養学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)MBA。早稲田大学より博士(学術)。ベイン・アンド・カンパニー、デル(法人マーケティング・ディレクター)、スターバックス(経営企画部門長)、ローランド・ベルガー(執行役員シニアパートナー)などを経て現職。コンサルタント時代には、電機、消費財、自動車など幅広いクライアントにおいて、全社戦略、事業戦略、新規事業開発の立案および実施を支援。現在は、経営戦略、ロジカル・シンキングなどの企業研修も手掛ける。早稲田大学経営管理研究科客員教授、キトー社外取締役、三井倉庫ホールディングス社外取締役。著書は『本質思考』他多数。

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