恵まれている日本男性が「不幸に見える」根本原因 日本の男性たちが置かれた状況は大きく変化した

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しかし、1990年代以降になると、雇用・労働・経済構造が大きく変化し(ポスト工業化社会)、戦後日本的な「男」のライフスタイルは不安定なもの、不確かなものになってしまった。

先進諸国では規制緩和が進み、非正規雇用者の数が国際的に増大した。また労働のあり方が「女性化」(サービス労働化、ケア労働化)した。逆にいえば、男性たちにもさまざまな対人サービスやケアワーク的な能力が求められるようになった。

他にも市場のグローバル化による人材配置・活用の柔軟化が進んで、製品の生産過程が細分化し、事業・業務のアウトソーシングが積極的に行われた。多様化する顧客ニーズに対応するために営業・業務時間が拡大した一方、さらなるコスト削減のため、仕事量の変化に応じて労働者の数を調整する必要性も生じた。

男性の生き方モデル(規範)が崩れるが…

これに応じて、家庭生活のあり方も不安定になった。未婚化・晩婚化・非婚化などと呼ばれる現象である。

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当然のことながら、男性による家事・育児・介護の分担がより積極的に求められるようになった。1999年には当時の厚生省が「育児をしない男を、父とは呼ばない。」と宣言し、後には「イクメン」などの造語も生まれた。

このように、生き方のモデル(規範)が崩れていく中で、男性たちは仕事・家庭のバランスや組み合わせをあらためて自己決定しなければならず、その結果を自己責任として引き受けねばならなくなった。

しかし、社会構造や経済状況は大きく変わったのに、「男性稼ぎ手モデル型」的な「男らしさ」とは別の働き方・生き方のモデルがまだうまく見いだされていない。

杉田 俊介 批評家

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すぎた しゅんすけ / Shunsuke Sugita

1975年、神奈川県生まれ。法政大学大学院人文科学研究科修士課程修了。文芸誌・思想誌などさまざまな媒体で文学、アニメ、マンガなどの批評活動を展開し、作品の核心をつく読解で高い評価を受ける。著書に『宮崎駿論』(NHKブックス)、『ジョジョ論』『戦争と虚構』(作品社)、『長渕剛論』(毎日新聞出版)、『無能力批評』(大月書店)、『非モテの品格』(集英社新書)などがある。

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