福岡のうどん、「ごぼう天入り」がやけに多いワケ 「ウエスト」「牧のうどん」「資さんうどん」……

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(写真:sogane/PIXTA)

加えて、各店のごぼう天うどんにはそれぞれに個性がある。

10cm程度のごぼう天を数本のもの、30cmは超えていようと思われる長いごぼう天が1本のもの、花で編んだ輪っか型の冠状になったもの……と店によって実にその形状は多様だ。

ごぼう天の重量感と適度なねっとり感、そしてボリューム。そして、やさしい味わいの出汁とごぼう天の相性がいいのか、筆者は以後福岡のうどん店では必ずごぼう天単体か、ごぼう天うどんを注文するまでになった。

コシの有無ばかり注目される? うどん報道の偏り

しかし、このごぼう天うどん、福岡のローカルフードのままで、全国的に広まっていく気配はない。いったいなぜなのか。どうやら、博多うどんに関する報道の傾向が関係しているようだ。

「福岡“も”うどん県であることが全国区のメディアで取り上げられ、認知が広がっていったのは2018年頃から」──。

そう語るのは、福岡出身で、「うどんフリーランス」として活動する井上こんさん。ライターとして全国各地のうどんを食べ歩いて、うどんの品種や魅力を発信する活動を行ってきたのち、現在は都内で「うどんスナック松ト麦」を経営する、筋金入りのうどんマニアだ。

井上さんによれば、中目黒「博多ちょうすけ(旧店名:二〇加屋長介)」、恵比寿「博多うどん酒場イチカバチカ」など、2018年頃、博多うどんを提供する店のオープンが立て続けにあったという。しかし、多くのメディアで言及されるのは決まって「麺のやわらかさ」だという。

「『コシがあるか/ないか』が、現在の日本の番組・記事におけるうどんネタの柱です。博多うどんもやわらかさばかりが注目されて、ごぼ天の話題まで行きつかないんです。全国的な広がりという点では、まだまだ伸びしろがあるといえます。

次ページ博多うどんの麺の歴史
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