ショート動画アプリTikTok(ティックトック)の運営企業として知られる中国のアプリ開発大手、字節跳動科技(バイトダンス)は9月16日、最大30億ドル(約4302億円)の現金を投じて既存株主が保有する株式の一部を買い戻す計画を発表した。
同社が提示した買い戻し価格は、最低でも1株当たり177ドル(約2万5383円)。そこから計算した企業評価額は3000億ドル(約43兆227億円)に迫る。既存株主はそれぞれの持ち株比率に応じた一定の株数まで、バイトダンスに買い取りを請求できる。
バイトダンスが自社株を買い戻すのは今回が初めてだ。同社の定款では、2022年11月までに会社が株式公開を実施していない場合、優先株を保有する一部の投資家が持ち株を現金で買い戻すよう会社に請求する権利を認めている。今回の買い戻し計画は、その期限まであと2カ月に迫ったタイミングで発表された。
背景には、バイトダンスの株式公開の見通しが立っていない現実がある。同社のCFO(最高財務責任者)を務める高准氏は、8月31日に開催された社内イベントで「現時点では株式公開の具体的な計画も、上場に向けたタイムスケジュールもない」と従業員に明言した。
ネット企業の膨張に当局が歯止め
バイトダンスがいつ、どこで株式を公開するかは、市場関係者の関心を集め続けてきた。同社は2019年に株式公開の準備に着手。財新記者の取材によれば、TikTokの事業を分離して海外市場に上場させる案や、全事業一括で香港証券取引所に上場する案など、複数のプランが検討されていた。
今回明らかになった3000億ドルという企業評価額は、香港ドルに換算すると約2兆3500億香港ドルに相当する。これは、中国のネットサービス大手で香港市場に上場している騰訊控股(テンセント)の時価総額の2兆8200億香港ドル(約51兆5276億円)に迫る規模であり、EC(電子商取引)最大手の阿里巴巴集団(アリババ)の時価総額(1兆8400億香港ドル=約33兆6208億円)を上回る。
だが、バイトダンスの上場計画は多くの不確定要素に加え、中国政府による監督強化の圧力を受けている。2020年11月、アリババ傘下のフィンテック大手、螞蟻集団(アント・グループ)の株式公開が(当局の介入によって)中止されて以降、中国では巨大ネット企業の市場支配的地位の濫用が摘発・処分されるケースが相次いでいる。「超大型プラットフォーム企業」の野放図な拡大に歯止めをかけるという、当局の姿勢は明確だ。
中国国家市場監督管理総局(中国の独占禁止法の執行機関)の規定によれば、超大型プラットフォーム企業の定義は、年間アクティブユーザー数が5億人を超え、少なくとも2種類以上のプラットフォーム・ビジネスを運営し、時価総額が1兆元(約20兆5294億円)を超える企業となっている。バイトダンスがこの定義に該当するのは言うまでもない。
(財新記者:関聡)
※原文の配信は9月16日
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