ただ、一般的な車いすでもそうだが装着タイヤの直径が大いに関係することから、段差の乗り越えは限界がある。歩道の小さな段差であればすんなりと乗り越えるが、車の輪留めなど大きな段差は越えられない。
仮にWHILLが乗り越えられたとしてもホイールベースが短く、乗車時は重心位置が高くなる電動車いすの特性上、後ろにひっくり返らないように乗っている人がバランスをとりながら運転する必要がある。もっとも一度乗れば慣れてしまう程度で危険はないが、体幹が弱いと傾いた自身の身体を支えられなくなるため、初めて乗る際は意識するとより安全だろう。
駅構内でもWHILLの好印象は変わらない。座った際の目線は身長170cmの筆者の場合、地上から115cm程度だったので、駅構内にある電子マネー方式の改札口の通過や、エレベーターの行き先ボタンの押下は着座位置との関係含めて良好だった。都市部の駅ではバリアフリー化が進んでいることから、トイレへの移動や、路面の段差で困ることもなかった。
ただし、今回は試乗というスタンスなので駅利用者に配慮して、始発電車の発車に合わせて駅構内を走行させた。よって、朝夕など混雑時の走行ではスムースに移動できない場面もあるのではないかと推察した。
車への積み込みは楽々
折りたたみ式であるModel Fの利点を確認するため、車に積み込んでみた。折りたたんだ際の車体サイズは最小で全長465mm、全幅555mm、全高855mmとコンパクトで、わずか3アクションで折りたためるため利便性も高い。
今回はマツダのSUV「CX-5」に積み込んだのだが、リヤシートを倒すことなくラゲッジルームに積載できたし、一度持ち上げてしまえば26.7kg(うち2.7kgがバッテリー)の重量もそれほど苦ではなかった。気になったのはラゲッジフロアとWHILLの接地面が狭く、26.7kgの重さが点(実際はWHILLのフレーム一部分)として集中すること。
衝撃吸収用として市販されている厚めのゴムシートなどを用意してラゲッジルームに敷くと解決しそうだ。さらに加減速でWHILLが動かないようラゲッジルーム側としっかり固定する必要がある。このあたりは利用者側の一工夫が必要であると感じた。
空港での自動運転サービスはどうか。羽田空港では2019年からの実証実験段階を経て、2020年6月8日から羽田空港国内線第1ターミナルで「人搬送自動運転システム」として実用化されている。保安検査場B近くに設けられた待機場所「WHILL Station」から3〜7番ゲートまで搭乗者と機内持ち込みサイズの荷物1つを運んでくれる。
空港で活躍するWHILLは「Model C2」に自動運転用の通信システムを搭載した専用モデルだ。実証実験段階から数回、筆者はこのWHILLを利用したが、通り過ぎるお店の店内にまで目が行き届きウィンドーショッピング気分に浸れた。周囲の歩行者との安全性を考え、走行速度は2km/h程度に抑えられていたこともありじつにゆっくりペース。ゆえに、食事処を通過する際には店内からのおいしそうな匂いに誘われそうになる。
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