現状のシステムでは途中下車こそできるものの、下車した時点で一定時間が経過するとWHILLは待機場所へと戻っていく。よって、たとえば食事処や売店の前にWHILLで駐車して食事や買い物をすることはできない。
とはいえ、歩くと時間の掛かる遠方の搭乗口までの道のりも、手荷物の積載ができるWHILLに座りながらの自動運転は快適で新鮮だった。
成田空港では、さらに一歩進んだ人搬送自動運転システムでの実証実験を行っている。羽田空港では同一フロア内での平行移動(乗り場から搭乗口まで)に限られたが、2022年7月28日から成田空港第2旅客ターミナルにおいてスタートした実証実験では、エレベーターと連携した立体移動(乗り場からエレベーターを使った別フロアの搭乗口まで)を新たに行う。
具体的にはWHILLとエレベーターがOcta Robotics社製の通信用モジュールを用いて通信し、エレベーターの乗降口にWHILLが近づくと自動的に行き先ボタンが押下された状態となり、ほどなくするとエレベーターが到着、それに乗り込むことで移動先のフロアまでの立体移動が行える。
おしゃべりも使って危険を回避
筆者も早速、実証実験に参加した。コロナ禍で空港利用客が少ないとはいえ、通路の形状によっては人が集まりやすい場所がある。WHILLはそうした場所を通過する際、安全な走行ができないと判断すると状況が好転するまで停止して電子チャイムを吹鳴して注意を引きつける。
しかし、それだけでは気づかれない場合には、「Excuse me, please step aside!/すみません、ちょっと通してください!」とWHILLのTTS(Text to Speech/テキスト読み上げ)機能を使ってしゃべり、さらなるお願いをする。日本語での発話も可能ながら、海外の旅行者を想定して今回は英語で対応。じつに健気だ。
エレベーターには他の空港利用者と一緒に乗り込めるが、WHILLはあらかじめプログラミングされた停止位置に留まり、目的階に到着したら他者の乗降状態に応じて移動を開始する。こうして周囲の安全を優先する姿勢は羽田空港のWHILLから終始一貫しているところだ。
自車周囲の認識にはLiDARセンサーを用い、ドライブレコーダーも完備する。車輪には前後左右方向にリングが動くオムニホイールを採用し360度旋回が可能。背もたれ後部には10kgまでの荷物の積載ができる。
WHILLを製造・販売するWHILL社では、これまで日本だけでなくダラス・フォートワース国際空港(アメリカ)、アブダビ国際空港(アラブ首長国連邦)、ウィニペグ国際空港(カナダ)、ジョン・F・ケネディ国際空港(アメリカ)などでも実証実験を行っている。
さらに直近の9月13日には、歩道を走れるスクーターとしてハンドル操作で運転できる「WHILL Model S」の先行受注を日本で開始した(21万8000円~/非課税扱い)。
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