私たち経済学者が「コロナ感染の分析」に挑んだ訳 研究者が政策現場で果たすべき役割は何が重要か

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棒グラフでシミュレーション
必要とされる知見を政策現場に届けた経済学者2人の挑戦とは?(写真:Graphs/PIXTA)
パンデミックの中、研究者が果たしうる役割を問い続け、社会・経済活動との両立を考えるための分析や、感染シミュレーションを発信し続けてきた経済学者の仲田泰祐氏と藤井大輔氏。毎週更新の見通しに加え、その時々で重要なテーマに関する分析をさまざまに公表してきた。
それは政策現場にも届き、たびたびの分析依頼にも応えながらモデル分析を通じて政策判断の材料を提供してきた。彼らはどのように行政や政治家等の政策関係者たちに分析を伝え、対話してきたのか。今回の経験を通じて何を感じ、研究者が政策現場で果たすべき役割として何が重要だと考えたのか。共著『コロナ危機、経済学者の挑戦 感染症対策と社会活動の両立をめざして』から2人の対談部分を一部抜粋、再構成して3回にわたってお届けする。

政策現場との関わり

――お2人がコロナ分析を通じて行政や政治家等政策決定に携わる方々とどのようなやりとりを重ねてきたのか、その経験を通じて新たに見えてきたことや、今後の課題等について伺っていきます。まずは改めて2021年初からの過程を整理していきます。

仲田 泰祐(以下、仲田):政策形成に携わる方々の中で最初にコンタクトしてくださったのは、立憲民主党の泉健太さんです(2021年11月より同党代表)。2度目の緊急事態宣言の解除時期について盛んに議論されていた2月上旬頃のことで、2021年2月5日の国会の予算委員会で、私たちが公開しているデータを使いたい、ということでご連絡いただきました。

また、内閣官房新型コロナウイルス等感染症対策推進室(以下、コロナ室)から問い合わせを最初にいただいたのも、同じ時期です。それぞれ国会での議論のために、コロナ対策と当時の状況について、情報を集め整理していたタイミングだったのではないかと思います。

最初の頃は、メールのやりとり一つとっても特に時間をかけて丁寧に対応しました。質問の一つひとつに対して、専門用語を多用せずにできるだけわかりやすい説明を付してお答えするように努めました。というのも、行政や政治家の方々に、私たちが円滑に対話できる相手だと感じていただけなければ、関係はその一度きりになってしまうからです。それでは政策形成に貢献することはできません。

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