第7波の感染者が高止まりするなか、多くのメディアがコロナ禍の逼迫した医療現場を報じた。そこで、たびたび見聞きしたのが「ファストドクター」という名前だ。
ファストドクターは、2016年から夜間・休日の救急相談プラットフォームとして、救急往診や救急オンライン診療を中心とする医療サービスを提供している。
コロナ陽性者への救急往診を始めたのは、自宅療養者の増加が問題になり始めた2021年2月から。これまでに約24万件を超えるコロナ患者(疑いも含む)に対応してきた。同社代表取締役の菊池亮医師に、コロナ禍を振り返ってもらった。
入院すべき人が入院できない悔しさがあった
──この2年あまりを振り返って印象に残っているケースはありますか。
菊池:1人目は40代、目立った基礎疾患もない患者さんでした。かけつけると呼吸が苦しいとの訴えがあり、パルスオキシメーター(血中の酸素飽和度を測定する装置)でも、SpO2(酸素飽和度)が90%未満と、肺炎の状態であることは明らかでした。
急いで入院調整を試みましたが、どこの医療機関も満床とのことで、同日の入院は認められませんでした。
もうお1人は50代、往診に行った前夜にも救急搬送を要請していましたが、搬送の適応なしと判断されてしまい、自宅で取り残されていました。
当時は、コロナ病床が満床だったために“SpO2が90%未満にならないと搬送できない”というローカルルールがありました。
一般的には、SpO2は96%以上が正常で、それ以下だと中等症1の肺炎で入院適応、93%以下では中等症2のかなり重い肺炎と診断され、当然のことながら入院が適応されます。
いずれも、本来なら入院して治療すべきなのに、なぜこういう状況になってしまったのだろうと、悔しい思いをした記憶があります。
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