コロナ自宅療養24万件診た医師が語る次への提言 6波までと7波の現状、そして今後どうすべきか

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──第7波では、経済活動と感染対策をどう両立させていくかが注目されました。菊池さんは両立のために、どんなことが必要だと思われますか?

菊池:まず、直近としてやることはワクチン接種でしょう。オミクロン株でも高齢者や持病がある人は重症化のリスクが伴うので、ワクチンを接種したほうがいいと思います。

一方、小児や成人は感染するけれど重症化しにくい。ですが、万が一、重症化したタイミングで感染拡大と病床逼迫が起こっていると、すぐに入院はできません。いまの日本の医療体制を鑑みると、すべての人がワクチンを接種しておいたほうがいいでしょう。

繰り返す医療逼迫と根本的な医療体制の強化

──毎回、感染者が増えるたびに医療逼迫が起こります。それだけ入院態勢を整えるのは難しいのでしょうか。

菊池:今2類相当から5類相当にするという議論がなされていますが、それで解消される部分もあれば、解消されない部分もあります。

保健所の業務と医療機関の事務的な負担は軽減されます。インフルエンザのように軽症の患者さんはセルフ療養することになれば、発熱外来の負担も減らせます。ただ、それだけでは根本的な医療体制の強化にはなりません。

コロナ患者さんへの医療機関の対応力をどうやって高めていけばいいのかというと、まずはコロナに対する感染対策を見直していくことが1つです。

──感染対策の見直しですか?

菊池:発熱外来を行う診療所と入院を担う病院とで違ったアプローチが考えられます。診療所の体制確保に向けては、検査は自宅でのセルフチェックを推奨し、診療所では処方行為のみを行うとすれば多くの施設が対応可能になると考えます。処方のみであればオンライン診療でも対応が可能ですし、対面診療の場合でも感染対策の難易度を下げることができます。

新型コロナウイルスの感染経路で問題なのは飛沫感染で、接触感染のリスクは低いということがわかってきています。つまりガウンや手袋などはあまり必要がないとする考え方です。

検体を採取するなど飛沫がかかるような作業をしない診察であれば、個人防護具(PPE)のフル装着をやめ、N95マスクとアイシールドだけにする。そういう対応で医療現場の負担はかなり軽減されます。

病院については、もう少し難易度は上がりますが、病棟単位での感染対策ではなく個室単位とするなどで、一般的な感染症と同水準の管理レベルに近づけることができます。国民と医療者の新型コロナウイルスに対する「慣れ」を少しずつ醸成していく必要があるのだと思っています。

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菊池亮(きくち・りょう)
ファストドクター株式会社代表取締役・医師。2010年、帝京大学医学部卒業。帝京大学医学部附属病院、関連病院にて整形外科に従事後、2016年にファストドクターを創業し、代表取締役に就任。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、一般社団法人日本在宅救急医学会評議員、一般社団法人日本在宅ケアアライアンス災害対策委員会・新型コロナウイルス感染症対策班プロトコール作成ワーキンググループメンバー。
ファストドクターは夜間・休日の救急相談プラットフォームとして救急往診や救急オンライン診療を中心とする医療サービスを提供する同社には、現在、1500人を超える医師が登録し、11の都府県で活動を行っている。
鈴木 理香子 フリーライター

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すずき りかこ / Rikako Suzuki

TVの番組制作会社勤務などを経て、フリーに。現在は、看護師向けの専門雑誌や企業の健康・医療情報サイトなどを中心に、健康・医療・福祉にかかわる記事を執筆。今はホットヨガにはまり中。汗をかいて代謝がよくなったせいか、長年苦しんでいた花粉症が改善した(個人の見解です)。

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