シダックス取締役会が「TOB反対」を続ける真意 コロワイド撤退も膠着状態、法廷闘争に突入も

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つまり取締役会は、株主間契約という自らは直接関与できない契約によって、会社の主力事業が売却される可能性を懸念している。TOBが成立すれば、約33.4%の株式を保有する創業家とオイシックス・ラ・大地で約6割の株を握ることになり、両者の意に沿った取締役を選任しやすくなるという事情もある。

しかし取締役会が抱く懸念は、オイシックス・ラ・大地、そして創業家にとっては、まったく相容れない主張だろう。今回のTOBはあくまで株主間契約の履行のためのもの。覚書はあっても、業務提携については現時点で白紙であり、株主間契約の履行後に検討すればいいというスタンスだからだ。そしてオイシックス・ラ・大地は、そもそもフードサービス事業について買収提案を行っている「事実はまったくない」と主張する。

最大の懸念はシダックス社内の分裂

取締役会の反対意見によって「敵対的」となったTOBは、今後どのように展開するのか。

ユニゾンがTOBに応じる可能性はある。ユニゾンは今回のTOBに応じれば、80億円のキャッシュを得る。ユニゾンは3年前に対象の株式を40億円で取得しており、ファンドの「出口」戦略としては悪くない。取締役会の賛同という条件は、株主間契約に盛り込まれているわけではなく、ユニゾンが自ら言及しているにすぎない。

9月1日には、創業家の申し立てを受け、東京地裁で「ユニゾンはオイシックス・ラ・大地以外に株を売却してはならない」とする仮処分命令が出ている。ユニゾンが売却に応じないまま買付期間である9月28日が経過し、TOBが不成立となれば、創業家がユニゾンに株主間契約の履行を求める法廷闘争を仕掛ける可能性もある。

何よりも最大の懸念は、シダックス社内が創業家との距離によって2分されているように見えることだ。これまでもオイシックス・ラ・大地との協業を支持するフード関連子会社の代表者名の書簡や、「会社を取り巻く状況について」と題された組合委員長名義の書簡が飛び交うなど、社内は混乱が続いている。

シダックスのグループ社員は非正規含め4万人弱。「グループを束ねるには、創業者は不可欠な存在」(関係者)という指摘もある。TOBが不成立になった場合の代替案として、取締役会からは自社株買いを活用したスキームも創業家などに非公式に提案されている。しかし、ここまでもつれた糸を元に戻せるのか。株主間契約の当事者である創業家とユニゾン、そして取締役会。3者の歩み寄りは簡単ではない。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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