シダックス取締役会が「TOB反対」を続ける真意 コロワイド撤退も膠着状態、法廷闘争に突入も
だが、ユニゾンはもう一つ、TOBに応じる条件を挙げていた。TOBに対するシダックス取締役会の賛同だ。同社の取締役は6人だが、今回のTOBに関しては、株主間契約の当事者である創業家(志太勤・最高顧問、志太勤一・会長兼社長)とユニゾン代表者を除く3人(うち社外取締役2人)が取締役会を構成する。その取締役会が強固に反対を続けているのだ。
ユニゾン主導の「ガバナンス改革」
なぜここまで問題がこじれるのか。背景にはオーナー企業ならではのガバナンスの問題がある。
現在最高顧問である勤氏が1960年に創業したシダックスは、典型的なオーナー企業だった。シダックスの関係者は「創業家の周囲はイエスマンで固められていた」と言う。そして「創業家の肝いりで始めた事業は赤字であっても放置され、聖域化された」(同)。
そうした中、2019年からシダックスに入ったユニゾンは、「ガバナンス改革」を進める。取締役会の構成は社内7人・社外1人から社内・社外3人ずつに。指名委員会を始めとした任意の委員会も設置された。
そして断行されたのが、「創業家の事業」からの撤退だった。病院内の小型売店事業、エステサロンの運営・・。スポーツジムも閉鎖した。名目は非コア事業の整理だったが、「いずれも創業家が主導した事業ばかり」(関係者)。勤氏の長男で会長兼社長の勤一氏が自宅の1階に開設した高級レストランも、閉店の憂き目に遭っている。
象徴的なのが、勤氏が自らの故郷、伊豆で進めてきたワイナリー事業だ。静岡県伊豆市にある中伊豆ワイナリーヒルズは2000年に開業。ぶどう畑から醸造所、レストランやホテル、乗馬のできる牧場なども併設されている。
だが、運営は厳しかったようだ。伊豆の観光の現状に詳しい地元企業の幹部は、「山の中にあり、観光施設として立地が悪すぎる。設備自体は立派だが、とても事業として成立しているとは思えなかった」と語る。事業は2015年にシダックスの100%子会社に譲渡されたが、2022年3月期の同社の累積損失は14億円以上にのぼる。
シダックスは2022年4月、そのワイナリーを創業家の資産管理会社に1円で売却した。つまり、創業家による買い戻しだ。今後も事業の赤字が続けば、それは創業家が負担することになる。